G7リーダーにジェンダー平等のエキスパートから提言 ~新型コロナウイルス感染症への対応と復興への道について~ (抄訳)

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2020年5月29日

2020年5月12日

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックが世界的な健康危機を超えて、労働市場及び社会・経済的危機に形を変えていく中で、プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長、ヒルデ・ハーデマンEC外交政策手段局長、デボラ・グリーンフィールドILO政策担当事務局次長が各国大臣、CEO, 業界団体・組合・市民社会・学術研究機関代表を一堂に集めてハイレベルラウンドテーブルを開催しました。テーマは「COVID-19(新型コロナウイルス感染)後に女性の経済的エンパワーメントや安全を担保するために果たすG7の役割」でした。

COVID-19パンデミックはジェンダー不平等をさらに深めて女性の雇用・生計に深刻な脅威をもたらしました。医療サービス、社会保障、デジタルテクノロジーへのアクセスの不平等からDVや無償のケアワークの増大まで、COVID-19の悪影響は世界中に及んでいます。でも介護を担う女性、インフォーマルセクターで働く女性たち、低所得家庭、若者がもっとも大きな打撃を受けました。

世界的に見ると女性はサービス業界の55.8%を占めていますが、G7を見るとこの数字は88%にも上ります。世界のインフォーマルセクターの約60%は女性が占めており、男性に比べて報酬は低く、貯蓄は少なく、貧困に陥るリスクはより高いのです。

このパンデミックは危機に直面すると公共の社会福祉セーフティーネットに頼らざるを得ないことを如実に表しました。また公的な経済部門も我々の日々の暮らしも、目に見えない女性・少女の無償労働によって成り立っているということもはっきりしました。

ラウンドテーブルの参加者は、パンデミック後に我々の望む復元力のある社会や経済を創り上げるためのアドバイスを提示しました。具体的には、COVID-19危機の対応や復興の中でG7のメンバー国がすべてのステークホルダーと連携して、ジェンダー平等と女性の経済的エンパワーメントを優先させることが最も重要だということです。

ラウンドテーブルの中でヌクカUN Women事務局長は次のように述べました。「COVID-19パンデミックは健康危機をはるかに上回り、我々が今まで構築してきた社会経済構造の中で当たり前と考えていたやり方を通すのを根本的に難しくしています。女性の収入や貯蓄は減り、安定した仕事に就くのが難しくなり、社会保障などが届かない非正規雇用に甘んじる可能性が高くなります。そこでG7のリーダーたちにお願いです。このことをはっきりと認識して、より平等で包括的、かつ復元力の高い社会を築いていくために、今までずっとないがしろにされてきた不平等をしっかりと後戻りしないように是正していただきたいのです。

ヒルデ・ハーデマンEC外交政策手段局局長は次のように付け加えました。「しかしながらCOVID-19危機は、復興を遂げてより良い状況を創り出すチャンスでもあります。我々は復興に際してぜひ女性をその中心に置くことに専念しなくてはなりません」

デボラ・グリーンフィールドILO政策担当事務局次長はこのように述べています。「COVID-19は最も残酷な方法で職場のとてつもない不安定さと不公平を露呈させました。このパンデミックで不可欠な役割を担っている人たち、医療・介護の担い手、清掃業者、スーパーマーケットのレジ係の多くは女性で、ワーキングプア(はたらく貧困層)だったり不安定な労働条件下で働いています。ILOはこのような不公平を是正できる、COVID-19への人間的対応と復興を要請しています」

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの視点に立ったCOVID-19危機への対応と復興を進めるために、G7加盟国が取り組んでほしい10のカギとなるアクションは以下の通りです。

                      記

・変化しつつある職場が直面するチャレンジに取り組むため、ILOスタンダードに則ったジェンダーの視点を取り入れた危機対応を立案して実行すること

・ジェンダーの視点に立った社会保障などへの投資を拡大し、これに質の高いヘルスケア、現金給付、食料支援などを含むこと

・女性が経営する中小企業に向けジェンダーの視点を入れたアプローチをとることで企業や雇用への影響を緩和すること

・医療従事者や最前線で働く人たちに、PPE(個人防護具)や生理用品など仕事に欠かせない備品、適正な労働条件と報酬を提供すること

・COVID-19への国家対応策にDVのリスクを軽減するなど女性・少女に対する差別や暴力に取り組むためのさらなる投資を含めること

・同一価値労働同一賃金などを推奨するWEPs(女性のエンパワーメント原則)にサインして、その原則を実行に移すこと

・金融分野のステークホルダーが責任ある事業活動を進めて、だれも排除しない企業文化を育成するため資本市場の力を活用するよう促すこと

・無償ケアワークの価値を認める経済復興パッケージを作成し、十分な育児サービスの提供、家族にやさしい政策の支援、無償ケアワークや家事を男性と共有すること。

・COVID-19への対応・復興過程で少女が誰ひとり取り残されないよう、教育や技能開発の中心にジェンダー平等を据えること

・危機対応や復興計画は男女別データを使って広報すること

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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