見えないところでCOVID-19により深刻な打撃を受けているバングラデシュの女性労働者
2020年6月8日
2020/4/27
写真:BNSK/サード・サミー
2020年4月14日の時点で、バングラデシュでは1,012人の感染者が確認されています。感染者数が日ごとに増加する中、新型コロナウイルスは、バングラデシュの女性たちに深刻で多大な影響を及ぼしています。
新型コロナウイルスは、誰でも感染する可能性がありますが、その社会経済的影響は、女性や少女が家庭や経済の中で長年受け続けてきた差別を浮き彫りにしています。一番打撃を受けているのは、出稼ぎ労働者や家事労働者といった最も貧しい人々です。
2019年には、70万人を超えるバングラデシュ人がバングラデシュ国人材・雇用・訓練局(BMET)を通じて出稼ぎ労働者として国外に移住しましたが、そのうちの約10万人は女性でした。世界各国が新型コロナウイルスの感染拡大を抑制しようとロックダウン措置を実施しているため、バングラデシュの出稼ぎ労働者の多くは帰国を余儀なくされ収入が途絶えた状態にあります。
首都ダッカから196キロ離れたボグラ県出身のジュレカ・ベグムさんもその一人です。2月末にサウジアラビアから帰国しましたが、いつ仕事に復帰できるかは不明です。
帰国した人たちは、生計手段を失っただけでなく、コロナウイルスの流行によって世間からいわれのない批判を浴びることにもなり、地域社会から疎外されています。
ジュレカさんは帰国後、バングラデシュ政府がロックダウンを実施する前から自宅に留まっています。「私は生き延びて一人の普通の人間として生活を送らなければなりません。いずれまた海外に戻る必要があります。でも今は、社会的圧力のために、自分の家から出ることすらできません」と、ジュレカさんは述べました。
「国に戻った時、私の健康状態は良好でした。それなのに隣人たちは私がウイルスをばらまくのではないかと疑い、警戒しています。いつになったらこのような状況が終わり、自由に動けるようになるのでしょうか」。
世界的にみても、またバングラデシュにおいても、家事労働者の大半は女性です。バングラデシュ国内で家事労働者を雇っていた家庭も、新型コロナウイルスの市中感染を防ぐために、彼(女)らに暇を出しました。多くの家事労働者にとって、それは収入がなくなり食べるものにも困るということです。
ダッカのモハマドプール出身のラニ・ベグムさんもそのような労働者の一人です。
ラニさんはインフォーマル経済で働く数百万の女性の一人ですが、パートタイムの家事労働者として3つの家庭で働いており、夫はリキシャの運転手をしています。毎月の家賃の6,000タカ(71米ドル)は、彼女の賃金で賄ってきました。新型コロナウイルスの発生後、2人には仕事がなくなりましたが、大家族を養わなければなりません。
「今日は、米と野菜だけで家族に食事を作りました。魚や他の食材を買う余裕はありません」とラニさんは言いました。
社会保障政策がラニさんやジュレカさんのような女性労働者にまで届かない限り、コロナウイルスによって格差が生じ、今後もそのような状況が続くでしょう。
世界全体では女性のほぼ6割が、低賃金で十分な貯蓄やセーフティーネットもないままインフォーマル経済で働いています。世界の市場が崩壊し、多くの人が職を失っている現状で、そのような女性たちが貧困に陥るリスクがさらに高まっています。新型コロナウイルスの流行によって、バングラデシュの小規模事業者はすでに多大な影響を受けており、商店やレストラン、美容院などは休業し、ごく一部のレストランだけが宅配で営業を続けています。
ダッカのナミラ・ホセインさんは、自宅で作った料理を提供したい人とおいしい家庭料理を求める人の仲介をするオンラインプラットフォーム、Cookupsの創設者です。このプラットフォームには、16,000を超える人が料理提供者として登録しており、そのほとんどが女性です。
コロナウイルスの感染拡大後、スタッフが食事の配達に不安を感じるようになり、ナミラさんは事業を停止せざるを得ませんでした。Cookupsの登録者の多くは女性で、個人事業主ですが、プラットフォームの閉鎖によって彼女たちも唯一の収入源を失いました。「仕事のできない毎日は、私たちにとって大きな痛手です」とナミラさんは述べました。
ナミラさんは、ロックダウン措置が解除され次第、事業を再開するつもりですが、ほとんどの市場が閉鎖されているので、再開しても適切な食材を調達するのが難しい状態が続くのではないか、配達に必要な人材を十分に確保できないのではないか、と心配しています。
ナミラさんは女性が運営する小規模事業に対する政府からの援助の重要性を強調します。「物流面の支援だけでなく、スタッフが感染した場合の医療費を賄うための援助も必要です。現金給付や減税などの措置があるととてもありがたいです」。
4月5日、シェイク・ハシナ首相は、7,250億タカ(約85億7,000万米ドル)の国内景気刺激策を発表しました。このパッケージには、公共支出の増加、財政出動の拡大、社会保障制度の拡大、通貨供給量の増加などが含まれます。
UN Womenバングラデシュ事務所の石川祥子所長は、次のように述べています。「現在導入されている景気刺激策と社会保障政策が、ジュレカさんやラニさんのようなインフォーマルセクターにいる女性、そしてナミラさんやナミラさんのプラットフォームの登録者のような個人事業主にも確実に届くようにしなければなりません。
私たちは、女性の声を政策立案者に確実に届けられるよう、市民社会団体をつなぐジェンダーモニタリングネットワークを構築し、定期的に連絡を取って、女性たちが直面している困難な課題についての情報を集めています」。
UN Womenは、救済活動においてもCookupsのような事業者と協力しています。Cookupsや出稼ぎ労働者や家事労働者の支援組織であるBangladesh Nari Sramik Kendra(バングラデシュ女性労働者センター)とともにクラウドファンディングを利用して資金を調達し、出稼ぎから帰国した女性や家事労働者300人に食料品と調理済みの食事を配布しました。
(翻訳者:松本香代子・実務翻訳スクール)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会