UN Womenの新型コロナウイルス感染症への対応(抄訳)
2020年6月16日
UN WomenはCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)危機が女性・少女に及ぼす影響を緩和して、長期にわたるであろう復興プロセスが彼女たちのためになるよう、的を絞った緊急対応策を立ち上げています。それには政策助言、プログラム介入などが含まれ、以下の5つの優先分野に焦点を当てています。
- DVなどのジェンダーに根差す暴力を軽減・削減する
- 社会保障や経済刺激策のパッケージを女性・少女に提供する
- ケアワークを男女が平等に負担・実行する
- 女性・少女がCOVID-19対応策の策定や決定に参加してリードする
- データや調整メカニズムにはジェンダーの視点を入れる
この対応を支援するためにグローバルなプログラムプロポーザルが作成されました。Gender-Responsive Prevention and Management of the COVID-19 Pandemic: From Emergency Response to Recovery & Resilience(ジェンダーの視点を取り入れたCOVID-19対応・防止策:緊急対応から復興・復元力まで)です。
★DVなどのジェンダーに根差す暴力を軽減・削減する
UN Womenはこの対応に以下の5つの分野を含めています:
- 予防と意識向上
- 迅速な評価への支援
- ヘルプラインやシェルターを含む必要不可欠なサービスへのアクセス
- 公共の場での女性に対する暴力
- 女性団体・グループへの支援
UN Womenでは各国で起こっているCOVID-19による女性・少女への暴力を迅速にモニター・評価しています。具体的にはボスニア・ヘルツェゴビナ、エジプト、フィージー、ヨルダン、レバノン、リビア、マラウィ、モロッコ、パレスチナ、南アフリカ、トンガ、チュニジア、バヌアツなどが含まれています。アジア太平洋地域でも警察官や軍による国境地帯での性的虐待や仕事を失った移民女性への心理的暴力のリスクが高まっていることが報告されています。
UN Womenは保健、司法、社会福祉、ヘルプラインなどの必要不可欠なサービスへのアクセスを確保することで暴力の防止に努めています。カメルーン、中央アフリカ共和国、コートジボアール、リベリア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、セネガルではパンデミックの女性サバイバーが質の高い必要不可欠のサービスにより迅速にアクセスできるよう支援しています。またボリビア、エクアドル、南アフリカ、スーダン、トリニダード・トバゴ、バヌアツでは警察や司法機関などへの紹介手順を簡素化してそのサービスを受けやすくするためにパートナーを支援しています。
★社会保障や経済刺激策のパッケージを女性・少女に提供する
これに取り組むためUN Womenは以下の4つの分野に的を絞っています。
- 政策的対応を推進するため評価や政策提言を支援する
- 女性が運営する企業への支援
- 民間部門の参加を促す
- ジェンダーの視点を入れた調達
UN Womenは様々な地域で女性経営者の企業支援をすでに始めています。アラブ諸国、南アメリカ、カリブ海沿岸諸国では女性が多く働くCOVID-19の影響を受けた観光業、接客業などの分野への支援に的を絞っています。南アフリカでは、GoogleやMTN(Mobile Telecommunications Network)とパートナーシップを組んでオンライン学習コースを提供し、女性経営企業4500社が政府の景気刺激助成金を申請するのを助けています。UN WomenはジョージアではNGOと組んで主に農業などの小企業女性経営者80人にCOVID-19の影響について聞き取りを行いました。
UN Womenはまた現金や食料品の提供も行っています。セネガルではUN Womenが女性生産者からコメを買い上げ、政府が脆弱な家族に配り、生産者は毎月現金給付を受けています。レバノンでは条件なしの現金給付を実現するため、キャッシュフォ―ワークや就業斡旋の形をとっています。ヨルダンの難民キャンプではUN Womenがブロックチェーンなどの技術を駆使して現金給付を実施するためWFPと協働しています。
★ケアワークを男女が平等に負担・実行する
これに取り組むためUN Womenは以下の3つの分野に的を絞っています。
- ニーズ評価と適切な公共政策策定への支援
- 家事労働者などのケアワーカー支援
- 「行動を変えよう」キャンペーン
アルゼンチンでは、感染症戦略や公共政策に役立てるためにILOと共同でケアやリモートワークに関する調査をオンラインで行いました。エクアドルではUNDPとパートナーシップを組んでキャシュフォーワークの枠組みを使って現金を支給しました。エルサルバドールではCOVID-19対応で無償のケアサービスを提供している女性を支援するための特別助成金を開発中です。
現在のように「ステイアトホーム」の状況では様々なケアの責任を平等に分担するよう社会規範を早急に変えていく必要があります。UN Womenの#HeForSheAtHomeキャンペーンは家事の負担を平等に分担するよう男性・男子を促しています。UN Womenモロッコは子供の教育、育児・家事を男性・男子も担うよう勧めています。UN Womenマラウィはインフルエンサー(多くの人に影響を与える情報発信者)による意識向上・啓発活動を支援し、感染症拡大に影響を及ぼすような文化的慣習の変革にも取り組んでいます。UN WomenレバノンはUNDPと共同で社会規範改革、ケアワークの共有、DV防止を訴える意識向上キャンペーンを立ち上げています。ラテンアメリカではPAHO(全米保健機構)、WHO, ILOとパートナーシップを組んで保健などのケアワークに従事する女性の認知度を高めるキャンペーンを実施しています。
★女性・少女がCOVID-19対応策の策定や決定に参加してリードする
これに取り組むためUN Womenは以下の4つの分野に的を絞っています。
- リーダーや政策立案者を集めて感染症対応に女性のリーダーシップが欠かせないことを啓発する
- 感染症対応の最前線にいる女性団体や女性を支援
- HIVと共に生きる女性への支援
- 意識向上キャンペーンと社会的動員
UN Womenは「女性・平和・人道支援基金」、「スポットライトイニシャティブ」「国連女性に対する暴力撤廃信託基金」を通して支援を広げています。ヨーロッパや中央アジアの18カ国で128の市民社会団体と会合を重ねて政策提言を行っています。
バングラデシュでは12の難民キャンプでジェンダー担当者がCOVID-19やサイクロン対応に追われながらジェンダーに根差す暴力の支援も行っています。ミャンマーではUN Womenが女性団体、特にリーダーシッププログラムを卒業したロヒンギャ女性を動員・エンパワーしてCOVID-19 の予防や対応を広報してもらっています。
ネパールで、UN Womenは障害者・LGBTI・ダリット女性団体を含む組織のリーダー17人と会合を持ち、新たに浮かび上がってきた問題を洗い出し、協力して政府や人道支援カントリーチームへの啓発を実施しました。
ガザやヨルダン川西岸地区では30の女性団体とパートナーが討議できるプラットフォームが立ち上がり、情報を共有したり、COVID-19への対応で女性の声を大きくする活動が行われました。
★データや調整メカニズムにはジェンダーの視点を入れる
UN Womenは国の対応策が女性・少女のニーズに合致していることを確認するため政府やUNパートナーに直接技術的支援を提供しています。レバノンではWHOと協働で国の対応にジェンダーの視点を入れるなどして支援しています。チュニジアのCOVID-19対応を支援するためにはジェンダーの専門家も派遣しています。
東チモールでUN Womenは緊急事態宣言にジェンダーの視点が確実に入るよう、担当省庁に技術的支援を提供しました。ベトナムではUN WomenとUNICEFは隔離センターで女性・子供を守る施策がとられるよう労働傷病兵社会省を支援しました。
パラグアイではUNDP, UNICEF, UNFPA, UN Womenが女性省に様々な助言を提供しました。ヨルダンではUN WomenがCOVID-19感染症対応にジェンダーの視点を入れた指針を作るため、ヨルダン国家女性委員会と協働しました。
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会