女性のリーダーが大きく取り上げられないのはなぜか...女性リーダーの5つのストーリー(後編)
2020年11月7日
2020/9/14
女性は男性と同じように有能なリーダーになれるかというのは、これまで一度も問われたことはありません。女性はこれまでも、特に困難な時期、地域社会が必要とするときは常にリーダーシップを発揮してきましたし、これからも発揮します。
むしろ問わなければならないのは、女性のリーダーはなぜ見えないのか、女性の潜在能力や力はなぜ抑え込まれているのか、ということです。
新型コロナウイルス感染症が世界中で大流行する中、行政の長、国会議員、医療従事者、地域社会のリーダーとして、女性は至る所で最前線に立ってきました。女性団体や地域団体が、ウイルスの拡大防止において多くの責任を担い、最も必要とする人々に奉仕してきました。それにもかかわらず、女性は長年意思決定のプロセスから排除されてきました。
現在、国家元首または行政の長を女性が務める国はわずか21ヶ国です。この新型コロナウイルス感染症が拡大している中にあっても、こうした女性のリーダーがより包括的な意志決定やより民意を代表する統治を生み出しているにもかかわらずです。いまだに男性が国会議員の75%、管理職の73%を占めています。正式な和平プロセスで交渉にあたるのもほとんどが男性です。
本年の国際民主主義デーでは、この新型コロナウイルス感染症の大流行からより良い社会の復興を達成するためには、女性の幅広い考え方や経験、リーダーシップを引き出すことが極めて重要であることにあらためて気づかされました。
では、ご存じない方のために、女性たちがすべての人々の幸福のためにどのようなリーダーシップを発揮したかを物語る5つのストーリーをご紹介します。(ストーリー1:新型コロナウイルス感染症拡大下において強い女性リーダーシップを発揮(コソボ)、ストーリー2:食料不足との戦いの最前線(インドネシア)、ストーリー3:リビア全国でのウイルス感染予防対策への取り組み、はすでに当協会ホームページに掲載される前編をお読みください)
4. 先住民族に対する医療サービスと情報提供の障壁を撤去(グアテマラ)
新型コロナウイルス感染症の発生以来、ロペス医師は慢性的な重度の栄養失調、性と生殖に関する健康、難病や慢性疾患に関する遠隔診療を行い、都市封鎖中であっても患者が継続的に命に関わる治療を受けられるようにしてきました。マヤ保健アライアンスは、900世帯以上に対して食料の配布も行いました。
こうした治療や援助の提供に加え、マヤ保健アライアンスはすべての人が医療を受けられるように保健や医療の障壁を低減するよう取り組んでいます。今も続く新型コロナウイルス感染症との戦いの中で、先住民族が住む地域でウイルスの感染予防について伝える際に、いかに言葉がコミュニケーションの妨げになっているかをロペス医師は経験しました。このように社会の片隅に追いやられてきた人々に適切に対応するために、マヤ保健アライアンスは関連団体と共に、地方の住民や先住民族の文化に合わせて、ビデオやオーディオ、ラジオプログラムなどを7つのマヤ言語とスペイン語で作成しました。
ロペス医長が率いるマヤ保健アライアンスは、新型コロナウイルス感染症の対応で他にも極めて重要な役割を担ってきました。例えば、100以上の地域組織に属する180以上のメンバーから成るWhatsAppグループを通して、医療従事者間での感染予防策を共有したり、農村地域で医療サービスを行う医学部の最終学年に属する学生に対して個人用防護具を提供したり、医療専門家にオンラインでの評価や教育を行ったりしています。
「新型コロナウイルス感染症の危機により、これまでずっと放置されてきた厳しい現実が明らかになりました」とロペス医師は述べます。「少しずつですが、先住民族の女性が家族や社会における女性の本来の役割を自覚し始めています。これまでの人生経験があり、我々が誰であり、何を求めているのかが分かっており、さらに地域社会の真のニーズは何かをよく理解しているので、大きな貢献ができます」。
アメリカ大陸女性リーダーシップタスクフォースが収集した、ロペス医師をはじめとする女性リーダーの話はこちらから読むことができます。UN Womenはアメリカ大陸諸国及び国際的な主要機関で構成されるこのタスクフォースの一員です。同タスクフォースは南北アメリカとカリブ国における女性のリーダーシップの促進と支援を行っています。
5. ウガンダの難民居住地における新型コロナウイルス感染症拡大防止
ウガンダのユンベ県にある難民と住居を失った人のためのビディ・ビディ居住地の給水所で、ジョイス・マカさんが待機しています。マカさんは、スーダンからの難民で3人の子どもの母親です。反逆者に夫を殺された後にウガンダに来ました。居住地のB地区で平和の仲介役を担う12人の女性の一人で、現在は新型コロナウイルス感染症との戦いの先頭に立っています。
都市封鎖が実施されているにもかかわらず、マカさんは給水所で待機しています。というのは、人々、一般的には女性と少女が給水のために頻繁にここに来るので、この給水所を命を救う情報を伝えるための戦略的拠点にしているからです。新型コロナウイルス感染症の発生以来、ほとんどの人が自宅待機を余儀なくされており、ウイルスに関する情報発信が非常に難しくなっています。
「お互いの距離を最低でも2メートルは確保し、水を汲む前後に手を洗うように伝えています」とマカさんは説明します。平和の仲介者として、マカさんをはじめ仲介役の女性たちは通常はドメスティックバイオレンス、早婚、土地の権利に関する問題など、地域紛争の仲裁を行っています。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大したため、感染防止の指導をするようになりました。
彼女たちは手洗い、フィジカル・ディスタンシング、マスクの着用、検査、隔離の重要性などを学び、この情報を現地の言葉で作った歌を通じて地域の人々に伝えています。
地域社会の信頼と協力を得ることが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の鍵です。そのため、平和の仲介者など地域で信頼されている人が医療情報を伝えることが大切です。地域の人々の健康のため、仲介者である彼女たちのリーダーシップと献身が、かつてないほど重要です。
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(翻訳者:土居良子・実務翻訳スクール)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会