COVID-19の拡大から自分の小規模事業を守ろうと立ち上がったミャンマーの女性

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2021年3月2日

2020/05/04

執筆者:シュエ・ミヤ・テイン、レリー・ロタ*

新型コロナウイルス感染拡大対策として、ポスターの掲示、公共手洗い所の設置とともにシットウェで行われている市民への注意喚起の様子。イラスト:UN Women/レスリー・ロタ

ミャンマー、シットウェ:ミントさん**は今、彼女が暮らす地域で小規模事業を営む多くの人たちと同様、新型コロナウイルス感染症拡大のために収入が落ち込んでいます。しかし、UN Womenのプログラムで学んだビジネスの知識を使ってこの事態を打開しようと目論んでいます。

ミントさんは、ミャンマー西部ラカイン州の州都シットウェにある村に住む30代の女性です。これまでは自宅で布製の多目的バッグを作り、自分の村や近隣の村、マーケットなどでそれを売って家計を助けてきました。

人通りの絶えたシットウェの街。イラスト:UN Women / レスリー・ロタ

しかし今、そのビジネスを続けることができなくなりました。マーケットに行くこともできなければ、シットウェの町の中心部に行くことすらできません。新型コロナウイルスは感染力が強いということを聞き、人混みに入って感染するのを恐れているからです。また、地方自治体も、感染症対策の一環としてあらゆる形の集まりを制限し、できるだけ外出を控えるよう人々に呼びかけています。

つまりミントさんは、家でバッグを作ることはできても、売りに行くことができないのです。

「今は商品を直接地域のマーケットに送ることもできないし、ヤンゴンのバイヤーの中には注文を控えている人もいます」と、ミントさんは述べました。

彼女の夫はトゥクトゥク、いわゆる三輪タクシーの運転手ですが、やはり新型コロナウイルス感染症の影響で客足が落ちています。最近は帰宅も早く、夏休み中の9歳と13歳になる子どもたちと過ごしています。一家は木と竹で造られた小さな家で暮らしています。

ミントさんは別の販路はないかとずっと考えてきましたが、オンライン販売がその解決策になるかもしれないと思っています。

「今、市場を調査しています。UN Womenのプログラムでデジタルマーケティングの研修を受けた友人の助けを借り、商品の写真を撮ってネットに挙げてみようと考えています」とミントさんは言いました。「以前と同じような収入が得られるとは思いませんが、他の女性たちと力を合わせて、自分たちの事業を状況に適応させて機能させるにはどうすればいいかを考えなければなりません」。

ミントさんは、ラカインで実施されたUN Womenのプログラム(ラカイン事業)から少額の助成金を受けてバッグの材料を入手し、自宅でビジネスを始めました。

このプログラムの第2フェーズ(2019~2020年)で、UN Womenは女性を対象に農業と家内工業に関連した技能の向上、金融、市場、事業開発に関する知識の向上に取り組みました。このプログラムでは、これまでに国内避難民のためのキャンプや、シットウェ、パウクタウ、ポナギュン、ミャウウーなどの村に住む3,611人の女性を支援してきました。女性たちは魚網、手工芸品、多目的バッグ、編物、織物、縫い物、草木染めの方法などを修得しました。

ミントさんは自宅でバッグを作っていましたが、COVID-19感染拡大によって売上は減少しました。イラスト:UN Women / レスリー・ロタ

ミントさんの他にも690人の女性たちがプログラムを通じてビジネスの仕方を学び、ビジネスプランを書き上げて助成金を受けました。

ミントさんが新型コロナウイルス感染症についての知識を得たのも、UN Womenのプログラムを通じてのことでした。フィン・チャーチ・エイド・コーンソーシアムと共同で行われた手工芸研修の上級コースを取ったミントさんたち参加者は、そこで感染予防について学びました。

UN Womenは、他の国連機関、パートナー、政府などと協力して、新型コロナウイルス感染症に対する国民の意識を高める活動をしてきました。UN Womenのシットウェ事務所は、女性向けの情報提供、女性が保健サービスや社会的保護サービスを受けるための支援、女性たちのニーズや懸念に応えた隔離センターなどのウイルス対策策定などに取り組んでいます。

UN Womenのラカイン事業は、国連の2つのプログラムで構成されます。第1フェーズは、ラカイン州人道支援・開発援助プロジェクト(2019~2020)です。これは日本が資金を提供し、UN Women、国際連合開発計画(UNDP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が実施したプロジェクトで、紛争から逃れた人々が自宅に戻り生活を再建できるよう支援しました。この第1フェーズのプロジェクトが補完する第2フェーズのプロジェクトは、カナダとドイツが資金を提供し、UN WomenとUNDPが実施している「ラカイン州における女性のエンパワーメントと復興力に優れた包括的なコミュニティ構築(2019~2022)」です。


*シュエ・ミヤ・テインさんは、UN Womenのプログラムのパートナーの1つであるルター派世界連盟で活動しています。レスリー・ロタさんはヤンゴンのUN Womenのコミュニケーション・オフィサーです。
**ラカイン州の不安定な状況を考慮し、ここではファーストネームだけを使用しています。

(翻訳者:松本香代子・実務翻訳スクール)

カテゴリ: ニュース

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