公正で健全な世界の構築には女性・少女への投資が必要(抄訳)
2021年4月28日
4月7日の世界保健デーに寄せて、UN WomenはCOVID-19や悪化の一途をたどる不平等と最前線で闘っている女性達にスポットライトを当てています
2021年4月6日
世界保健機構(WHO)がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックを宣言してから1年がたち、世界の感染者は13,100万人を超えました。私たちが営々と営んできた生活は一時停止し、変容してしまいました。でもパンデミック以前からはびこっていた不平等は、「ニューノーマル」と表現される現在に持ち越されています。阻止しなければ、さらに広がっていくことでしょう。
最近出版されたUN Women レポートによると、2021年までに43,500万人の女性・少女がUS$1.90以下で生きる最貧層に追いやられてしまいます。パンデミック下で貧困に陥るリスクは女性の方が男性よりずっと高いのです。なぜなら女性は低賃金で働き、経済的ショックをまともに受ける非正規で働く人が多いからです。また女性は男性より失業しやすく、貧困に陥った女性たちはCOVID-19により感染しやすく、死亡率も高いのです。
パンデミックを通して、女性に対する暴力は増加し、ヘルプラインへの電話が5倍に増えた国もあります。加害者と一緒に家に閉じ込められているので、女性がヘルプを求められないという国もあります。ロックダウン3か月ごとに1500万人の女性がジェンダーに根差す暴力を被るリスクがあるという予測もあるのです。
COVID-19との戦いで、女性は医療従事者、介護者、リーダー、イノベーターとしてその最前線にいます。世界的に見て、医療従事者や救急隊の70%は女性です。それなのに男性と同等の賃金が払われていません。現在、世界の政府関連COVID-19タスクフォースでは、男性が女性を3対1で上回っています
世界がCOVID-19から立ち直って「良い社会の復興(BBB)」を遂げようとしている背景はこのようなものです。世界保健デー (4月7日)を迎えて、COVID-19の最前線で働く女性達が、より公正・健全・平等な世界の構築に向けてどのように戦っているかを見てみましょう。
言葉の壁を破る
「先住民族のためもともと差別は受けていたのですが、パンデミックで家に閉じこめられて、家庭内暴力に耐えざるをえなくなっています」とジュアナ・ファカンドさんは述べています。
彼女は、メキシコやグアダラハラ大学で展開しているUN Women女性・少女のための安全都市・公共スペースプログラムで翻訳を担当し、ハリスコ州の州都、グアダラハラで活動しています。COVID-19関連情報を拡散する上で、言葉の壁を取り除き、先住民女性に対する暴力を防ごうとしているのです。
同プログラムはCOVID-19予防とジェンダーに根差す暴力の情報を5つの先住民言語に翻訳してラジオで拡散しています。パンデミックの影響を強く受けている近隣地域ではスピーカーを使ったりして、情報はハリスコ州の57,000人の先住民に拡散されました。詳しいストーリーは こちら。
女性リーダー、不平等と闘う
ラクシミ・バディさん、40歳は、2017年以来ネパール極西部のディパヤルシルガディ市の司法委員会や地区委員会のメンバーです。COVID-19が起こった時、彼女は誤った情報の拡散や差別を防ぐためコミュニティーの先頭に立って積極的に活動しました。
バディさんの先生、友人、隣人は彼女のそばに来るのを極力避けてきました。なぜなら彼女が「低いカースト」で「不可触賤民」とみなされているダリットコミュニティーの出身だからです。2020年、彼女はリーダーシップやガバナンスを指導するUN Womenのプログラムに参加しました。
COVID-19ロックダウンの間、バディさんの住む地域は、インドから帰国したネパール人移民であふれました。帰国移民は、14日間地域の施設に保護(隔離)されることになっていました。しかしCOVID-19が襲ってから、前から存在しているダリットコミュニティーに対する差別が加速しました。保護センターでは「上級カースト」の人々が、帰国したダリットの移民はCOVID-19を広めるからと言って中に入れず、門に鍵をかけてしまったのです。
それを発見したバディーさんは、ハマーで鍵を壊し、誤報の拡散を防ぎました。「上級カースト」を含むすべての人がCOVID-19に感染するリスクがあり、他人と距離をとって防がなくてはならないとアドバイスしたのです。ダリットへの差別を目にしたら警察に訴えることも警告しました。詳しいストーリーはこちら。
女性起業家を支援
「私は今こそ経済的回復力、ビシネスの再生が必要と考えます。女性が働き続けられるよう支援することも大切です」とキャロライン・ファタルさんは言っています。彼女は49歳で、多国籍企業やファミリービジネスなどに幅広い経験を持っています。
女性のエンパワーメントの信奉者であるファタルさんは、女性の労働力参加を改善するために「女性支援」NGOを立ち上げました。
2020年8月4日、ベイルート港で大規模な爆発があり、ビルが破壊され200人以上が命を落としました。その時に真っ先に駆け付けて女性が経営する中小企業の再建の手助けをしたのが「女性支援」です。
1月にロックダウンが再開するとキャッシュフローが止まって、女性達は家賃や公共料金が払えなくなりました。
「女性支援」はUN Womenから資金提供を受けて、女性が経営する企業に必要な器機やコンピューターを供給して仕事の再開を助けました。2020年8月以来、「女性支援」は109社の女性経営者を助けました 詳しいストーリーはこちら。
ジェンダーに根差す暴力被害者を支援
ナン・ザー・ニー・ミントさんは37歳で、ミャンマー出身、タイで19年間家事労働者として働いてきました。同国出身の他の家事労働者と会って、移民家事労働者の権利について知るようになりました。
「多くの家事労働者は、長時間労働で1週7日も働いています」とミントさんは言っています。「旅券や身分証明書を雇い主によって取り上げられている人もいます。中にはロックダウンで家に閉じ込められている間にジェンダーに根差す暴力の被害にあった人もいます」
ミントさんは現在、ミャンマー出身の家事労働者が自分たちの権利を理解し、それが侵害された時どんなサービスが受けられるかを知ることが出来るよう、ボランティアでサポートしています。具体的にはピアサポートカウンセリングの実施、サービスの紹介、通訳の提供などを行っています。
彼女たちは、女性・少女に対する暴力撤廃を目指すEU-UNスポットライトイニシャティブの一環として、UN WomenとILOが共同実施している安全・公正プログラムの支援を受けています。詳しいストーリーはこちら。
グローバルパンデミック下で女性の保健に取り組む
マラウィで、アレファー・マテンバ・バンダさん、31歳は看護師で、全国健康ホットラインにかかってくる電話に答えています。
「近頃受ける電話のほとんどは、COVID-19発生でクライエントが直面するチャレンジに関するものです」とバンダさんは言っています。「妊産婦の多くは、ウィルス感染を防ぐリソースを持っていないので、非常に心配しています。また、少女は保健医療施設にも避妊方法の情報がほとんどないため、望まない妊娠をしないか心配しています」
バンダさんはUN Womenのイニシャティブによるジェンダーに根差す暴力研修を受け、虐待のサインを見つけて、どのようにオンラインで妊産婦や思春期の少女に情報や支援を提供し、紹介業務をこなすかを学びました。
「私はCOVID-19の症状、検査を受けられる場所、予防法などをコンピューター化されたシステムを使って提供しています。クライアントは、妊産婦や思春期の少女がほとんどなのですが、無料電話で連絡してきます。ジェンダーに根差す暴力の被害者からの電話もあります。プログラムは、マラウィで400万人の女性や思春期の少女に、命に係わる情報を提供しています。詳しいストーリーはこちら。
(抄訳 本田敏江 理事)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会