女性や少女は新型コロナウイルス感染症にともなう救済をほとんど受けていないことが、新たなデータから明らかに

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2022年1月13日

2021/12/17

data.unwomen.orgから転載

UN Womenの最新の報告書では、女性や少女が新型コロナウイルス感染症によって、男性に比べて特に大きな社会経済的影響を受けていることがわかりました。失業や勤務時間の削減、家事・育児・介護の負担増、心と身体にかかる負担などによって、苦しみがもたらされています。報告書では、そのような状況にも関わらず、政府やNGOから新型コロナウイルス感染症にともなう救済や社会的保護を受けている女性や少女の割合が、男性や少年に比べてはるかに低いことを示しています。

UN Womenは新型コロナウイルス感染症にともなう社会経済的影響について、45の緊急ジェンダー評価調査(RGA)を各国の統計局、政府機関、国際パートナーと共同で作成し、結果を『取り残される女性と少女:パンデミック対応における明らかな格差』に取りまとめ、分析しました。本調査は2020年4月から2021年3月まで行われ、世界各地域から約10万人が回答しました。

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RGAによると、経済分野では性別や年齢で影響に差があることが明らかです。男女の約4分の1が雇用喪失の影響を受けましたが、子どもと暮らす生産年齢の母親の29%が職を失ったのに対し、子どもと暮らす生産年齢の父親は20%にすぎませんでした。また、子どもと暮らす若い母親も大きな打撃を受けており、56%が有給労働時間を削減された一方で、子どもと暮らす若い父親は44%にとどまりました。

家事・育児・介護に関しては、子どものいる有配偶女性に家事労働(女性67%、男性63%)、育児(女性70%、男性65%)が増えたと回答する人が最も多くみられ、労働の大変さ(3つ以上の活動に費やす時間として定義)が増えたと回答する女性も多くみられました。

また、女性は心身の負担を訴える人が多い傾向にもありましたが、最も影響を受けているのは若年女性でした。18~24歳の女性の71%が精神的・感情的ストレスを感じているのに対し、若年男性は59%でした。夫を亡くしたシングルマザー世帯の母親もまた、妻を亡くした父子世帯の父親よりも精神的・感情的ストレスを訴える人が多い傾向にありました(母親72%、父親68%)。

RGAデータは、救済と社会的保護制度が十分に活用されていないことも裏付けています。新型コロナウイルス感染症に関連して政府から現金給付を受け取ったと回答した女性の割合は、ごくわずかでした(女性10%、男性16%)。とりわけシングルマザーは取り残されており、現金給付を受け取った割合はシングルファザーの半分以下にすぎませんでした(シングルマザー12%、シングルファザー25%)。子どものいない女性(独身、寡婦、有配偶に関わらず)でも、男性に比べて現金給付を受け取る割合が少ない傾向にありました(女性8%、男性17%)。

社会的保護に関しては、19カ国で失業保険の対象になると答えた女性の割合が男性のほぼ半分でした(女性7%、男性14%)。特に、シングルマザーは失業保険の対象になる割合がシングルファザーに比べてかなり低く(シングルマザー5%、シングルファザー16%)、NGOの支援を受けている割合も著しく低くなりました(シングルマザー8%、シングルファザー25%)。子どものいない独身女性も、失業保険の対象になる割合が子どものいない独身男性と比べてかなり低い傾向にありました(女性8%、男性23%)。

注目すべきことに、若年女性(18~24歳)においても、若年男性と比べて現金給付を受ける割合(女性9%、男性21%)、失業保険の対象の割合(女性5%、男性18%)、NGOの支援を受ける割合(女性6%、男性7%)がいずれも低い傾向にありました。

若年女性やシングルマザー、子どものいる有配偶女性が新型コロナウイルス感染症によって最も大きな打撃を受けているというデータから考えると、今回の調査結果は驚くべきものです。これは、年齢や性別ごとに細分化された、説得力のあるデータが影響を明確に表しているにも関わらず、多くの政府やNGOが、救済策が最も必要とする人に届くように的確に対象設定していないということを示唆しています。

ジェンダーの視点を取り入れた政策は重要

あわせて、新型コロナウイルス感染症の拡大下で女性の経済的保障に対処する政策を策定した国では、政府の救済を受けたと回答した女性の割合が、そのような政策を策定していない国の女性の1.6倍にのぼることがRGAのデータで明らかになりました。これは、「COVID-19 グローバル・ジェンダー・レスポンス・トラッカー(ジェンダー対応追跡ツール)」のデータを用いて、感染拡大以前の失業と社会経済的状況を制御して算出したものです。

28カ国中、新型コロナウイルス感染症拡大下で無償労働を直接支援する政策措置をとった国に暮らす女性は、無償労働や家事労働が増えたと回答する割合が少ない傾向にありました(そうした政策措置がない国では82%、政策がある国では78%)。

反対に、女性の経済的保障や無償労働に対処する政策がない国では、政策がある国と比較して、感情・精神面で悪影響があると訴える女性の割合が1.3倍でした。

また、救済を受けていると答えた女性の中で、精神的・感情的な負担が増えたとする人の割合が、救済を受けていない女性より11%少ない傾向にありました。

本報告書は、女性や少女のニーズに効果的に的を絞った救済や社会的保護の対応が、新型コロナウイルス感染症によって女性にもたらされる男性に比べて不均衡な悪影響を和らげる上で重要な役割を果たすと結論付けています。ジェンダーの視点にたった政策策定には、意思決定者がジェンダーのデータに投資し、留意する必要があります。そして、よりよい社会の復興をなしとげるため、証拠に基づいて、誰も取り残さない政策や対応をすることが政府とNGOには求められます。

(翻訳者:本多千代美)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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