国連事務次長兼UN Women事務局長のシマ・バホス氏による第66回女性の地位委員会における開会挨拶
2022年3月25日
危機は脅威を倍増させるが、女性は解決策を倍増できる
私たちは、国連の使命に特に鋭く焦点が当っているこの時期に会議をしている。すべての危機と紛争は、女性と少女から高い価値を奪う。ミャンマーからアフガニスタン、サヘルからハイチ、パレスチナからシリア、ソマリア、イエメン、さらにエチオピア。さらにウクライナでの恐ろしい戦争が、今、このリストに加わった。
国連事務総長は明快だ。ウクライナ侵略は終わるべき、戦争は終わるべき、平和が勝利しなければならない。ウクライナの女性と少女の生活、希望、未来にどのようなダメージがもたらされていかを、私たちは日々見ている。私は、私たちの連帯と支援を改めて表明し、いま、戦っているすべての人々が直ちに平和を知ることができるように祈る。
我々は、危機を背景に3年ぶりにこのホールに集まって、今日、会議を開始する。COVID-19パンデミックは、既存の世界的な不平等を露呈させ、女性のエンパワーメントの進歩を急停止させた。今日、私たちはマスクを外すことができるが、世界の多くの地域では、ワクチンへのアクセスと適切な医療にまだ取り組んでいる。これらの地域には、ケアへのアクセスにおけるジェンダー不平等が蔓延している。
否応なく、世界的な紛争とCOVID-19パンデミックが私たちの心を大きく占め続けている。これらは、私たちが直面しているグローバルな課題の相互関係をはっきりと思い出させる。小麦生産国と石油の産油国2国間の戦争は、食料安全保障と世界中の不可欠なサービスへのアクセスを脅かしている。これも、また、女性と少女に最も大きな影響を与えている。COVID-19パンデミックは、アジェンダ2030の進展を脅かし続けている。今日求められているのは、連帯とグローバルな解決策だけでなく、新たなコミットメントである。
CSW66の合意結論によって、世界の強靭性と回復への道筋を示すことができる。この道は持続可能な開発目標（ＳDGｓ）によって導かれ、ジェンダー平等、多国間主義、外交、平和と正義へのコミットメントによって支えられるべきである。
我々の最大の共通課題の一つは、気候変動であり、この第66回CSWの優先テーマである。世界は燃えている。それは私たちの世界の隅々まで影響を及ぼし、太平洋から北極まで、平和、食料安全保障、持続可能な開発を脅かしている。すべての危機と同様に、気候変動も女性と少女に最も高い代償を払わせている。特に、すでに取り残されている人々:母子世帯、農山村漁村の女性、土地を持たない女性、干ばつ時、水を汲むために学校を欠席して、さらに歩かなければならない少女、年配の女性、金融にアクセスできない女性 - そのような女性は挙げきれない位、多い。国連加盟国は、リオ協定や仙台枠組みなどの多国間環境協定を通じて、ジェンダー平等に多くの重要なコミットメントをすでに行っている。今こそ、すでに合意されたことを実行し、ギャップがある場合は、ジェンダー行動計画を作成する時である。
国連事務総長の優先テーマ報告書は、明確な提言を掲げており、それがこの合意結論に反映されることを期待する。レポートは明確である。若者の参加が必要であり、鍵である。女性の参加とリーダーシップは、変化をもたらすために不可欠で、それが持続可能な未来を保証する唯一の方法である。
私たちは、天然資源の保全と持続可能な利用を管理する上で女性の技術を活用しなければならない。女性と若者は、至る所で気候と環境に関する行動を取っている。若い女性は世界の気候運動をリードしている。先住民族の女性は、生きた経験から解決策を得ている。わたしたちは耳を傾けなければならない。そして,わたしたちは行動しなければならない。
現在、女性と少女の権利、優先事項、ニーズは、気候、環境、災害リスクなどの政策とプログラムでは、体系的に見落とされている。例えば、137カ国の国家エネルギー枠組みのうち、ジェンダーへの配慮が含まれているのは3分の1にすぎない。
私たちは、国会、国のジェンダー平等機構、地方自治体、研究機関における若い女性を含む女性代表を意図的に強化し、政府一体アプローチを取らなければならない。女性は多様性に富んでおり、有意義かつ障壁のない意思決定空間の一部でなければならない。この包摂は、一時的な特別措置を通じたものを含め、ジェンダー平等を推進し、地球規模の気候危機に対する解決策を特定するために、皆さんが取ることができる具体的な加速された行動の1つである。
私たちは、気候と環境の危機と災害がエスカレートしていることを確信している。女性のレジリエンスを育み、投資することで、私たちは未来の防衛と今日の資産を構築している。レジリエンスとエンパワーメントは密接に関連している。
次の緊急事態を予測し、可能な限り予防し、発生したときにそれらを管理するための私たちの能力は、女性、少女並びにその組織に積極的に装備することにかかっている。農業生態学や林業生態学のベストプラクティスなど、そのための資源はすでに存在する。それらは、科学的、先住民族、先祖伝来の知識に基づいて、共有され、大規模化されなければならない。
私たちは、分散型の持続可能なエネルギー解決策を拡大しなければならない。私たちは、海洋経済学におけるジェンダーに配慮した漁業の支援が必要である。現在、女性は、水セクター労働力の17%未満に過ぎない。
私たちは、より安定した環境と、12億人以上の雇用が依存する生態系のために努力しなければならない。グリーンセクターには、推定2,400万人の新規雇用の可能性がある。女性がこれらの仕事に就くための訓練と支援を受けることは極めて重要である。
私たちは、教育、情報、スキルにおける世界的なジェンダーデジタルデバイドとジェンダーギャップを埋めなければならない。我々は、女性の経済的エンパワーメント及び資源へのアクセス向上を通じて強靭性を構築しなければならない。そして、私たちは普遍的で、ジェンダーに配慮した、社会的保護とケアシステムを達成しなければならない。
COVID-19パンデミックは、危機が女性の有給介護労働と女性と少女の無給介護と家事労働の両方を劇的に増加させることを明らかにした。UN WomenとILOが189の国と地域を対象とした新しい世界的推計によると、2020年には200万人以上の母親が失職した。これは、社会的保護、同一賃金、所得保障へのアクセス、ならびに管理職および指導的地位に就く機会に影響を与えた。この事実は、社会が容認できない累積的な損失である。
分散型の持続可能なエネルギーソリューションの拡大は、無給のケアと家事労働を減らすことによって、女性と少女の生活と回復力に大きな利益をもたらす。先週、私が安保理に報告したように、経済回復への女性の包摂は、平和と繁栄の両方に莫大な利益をもたらす。しかし、その逆もまた、真実。女性が排除されると、経済と社会は厳しい状況になる。
私は、安全保障理事会に対し、女性の経済的包摂においてその役割を果たすよう強く促した。私は今、女性の経済的エンパワーメントの進展をレビューする任務も負っているこの委員会に、同様なことを強く促す。グリーン経済への移行は、女性にディーセントな雇用を創出する可能性を秘めている。この機会を見逃すことはできない。
私は、レジリエンスとエンパワーメントは密接に関連していると話した。危機に対応し、女性が対応と予防を主導することを確保することは、UN Womenの優先事項である。
同様に、女性や少女に対する暴力や危機の高まりも密接に関連している。これは、気候変動による緊急事態によって避難を余儀なくされた女性にも当てはまる。彼女達の健康は、性と生殖に関する健康と権利を含み、気候危機でも包囲されている。我々は、保健システムを強化し、あらゆる種類の暴力を経験している女性及び少女への不可欠なサービスを含むサービス提供に拡大しなければならない。
我々はまた、女性の環境人権擁護者の権利を脅迫、暴力及び殺人から積極的に保護し、これらの人権侵害状況の監視システムを改善し、責任者を裁くものでなければならない。あらゆる形態の暴力に対する不処罰を終わらせなければならない。UN Womenは、国連システム全体にわたって、またすべての市民社会を含む可能な限り幅広いパートナーと協力して、この蔓延する女性の権利の侵害に取り組むことにコミットしている。
したがって、気候変動とジェンダー平等の結びつきに対処するために重要な3つの連動する側面がある。それらは危機、ケアを含む経済、女性と少女に対する暴力である。これら3つの未解決の側面は、持続可能な開発の進展を妨げる構造的障壁を支えている。
事務総長報告書は、気候の安定化と環境の持続可能性に対する効果的な対応には、公的および民間資金の大幅な増加と、重要な政治的コミットメントが必要であることを示している。女性団体、企業、協同組合を支援するためには、特に資金が必要である。しかし、ジェンダーと気候の運動は、十分な支援を受けておらず、資源も不足し、過小評価され、ほとんど認識されていない。
私たちは皆、女性と少女を気候政策と環境政策の中心に置かなければならない。
結論として、この会議はより持続可能な未来にコミットする機会である。
これには、ジェンダーに敏感な、単なる移行と、人々と地球へのケアをまさに中心に置くことの組み合わせが必要である。それには、アジェンダ2030の進展を加速させている世界を団結して追求するために築かれたグローバルな連帯が必要である。非常に厳しい見通しにもかかわらず、私たち全員が繁栄する持続可能な未来を築くための窓がまだある。女性と少女は、世界の人々の完全な多様性を真に代表する、新しく活発な多国間主義の重要な柱でなければならない。
最後に、私たちが今日直面している連動する危機は、脅威を倍増して互いの影響を悪化させ続けている。しかし、女性は解を倍増させる。 私は、この委員会のメンバーに対し、「人権を保護し、ジェンダー平等と女性と少女のエンパワーメントを促進すること」を中心とする2030アジェンダの決意を果たすよう呼びかける。そして、地球とその天然資源の永続的な保護を確実にするために。私たちは、このことや、「誰も取り残さない」という誓いを怠ってはならない。
本日、私は、気候変動対策に世界の女性と少女が、完全かつ有意義に参加できるようにすることに、改めてコミットするよう皆さん全員に呼びかける。リーダーとして、パートナーとして、イノベーターとして、実施者として、共同クリエイターとして。 わたしは行動喚起から声明を述べ始めた。私たちのグローバルな課題は相互に関連している。一人だけの進歩ではなく、すべての人の進歩であるべきだ。気候非常事態とジェンダーの不平等は、私たちが直面する最も広範な課題の2である。我々は一緒になってそれらに立ち向かわなければならない。それは私たちが将来の世代すべてに負っているものである。
ありがとうございました。
カテゴリ： ニュース , 国連ウィメン日本協会