ウクライナから逃げ、帰国を夢見て平和を願う女性たちのプロフィール
2022年5月9日
2022年4月22日
ウクライナの戦争が勃発して以来、モルドバとポーランドは最多数の難民を受け入れています。4月22日現在、約91,000万人の難民がモルドバ各地で暮らしています。UN Womenはパートナー団体と協力して、ロシアによるウクライナ侵略が、女性・少女にどのような影響を与えたか、男性へのそれと比較しながら調査するためにデータを収集・分析・広報しました。UN Womenはモルドバ国境警察と協力して、同国に暮らすウクライナ難民の人口動態プロファイルを記したファクトシートを3月中旬に発行しました。IOM(国際移民機関)と協働で、移民調査を行い、定性データ(データ分析に用いられるデータのうち、数値化による把握が難しく、心理的・感覚的な判断を要するデータのこと)も収集しました。UN Womenは評価に使う定性データを収集するために、仮設避難所に暮らす女性達に話を聞いています。
23歳のアンナ
23歳のアンナは、戦争が始まった日に故郷のマリウポリ を一人で出発しました。彼女は、キーウの40キロ北にあるバティチ、オルヘイの仮設避難所で暮らしています。「毎日体を動かす様にしています。ジョギングをしているときはつらいことを考えないで済みます」と彼女は言っています。
ウクライナでアンナは英語の教師していました。モルドバで唯一の収入を得られる仕事を失いたくないので、オンラインで授業を行っています。「正直なところ、同僚や生徒たちが生きているかどうかも分かっていません。連絡方法がないのです。私が持てるのは希望だけです」と彼女は言っています。
アンナはモルドバで必要とするものは全部整っていますと言っています。住むところ、おいしい食べ物、医療やインターネットへのアクセスなどに不自由はありません。一つだけ欠けているのは、ウクライナに残してきた親戚や友達だけです。
オデーサ出身のマリーナ
オデーサ出身のマリーナはアンナと同じ仮設避難所で暮らしているネールアーティストです。彼女は難民にマニキュアをしてくれるので、避難所ではちょっとしたセレブリティーになっています。仕事は一瞬でも戦争のことを忘れさせてくれます。「マニキュアは一種のセラピーです。仕事をしているときはマニキュアをしている女性や少女といつも話しています。アドバイスすることもあります。今の様な困難な時にはコミュニケーションをとることが皆の助けになります」と彼女は言っています。
戦争が始まった当初は、マリーナは逃げることに迷いがありました。そのうちすべてうまくおさまるだろうという淡い希望もあったからです。でも心理的には難しくなりました。「サイレンの音を聞くと落ち込み、いたたまれなくなりました。その音を消すために音楽を大きな音で聴いていたのです」と彼女は述べました。
彼女は一人でオデーサを離れました。でもモルドバの仮設避難所で数日暮すうちに、自分の仕事が恋しくなりました。ネイルアートのカタログを避難所の女性達に見せると、その反応からその人たちのネイルペイントをすることで気分を軽くすることが出来るのではないかと気づきました。友人の車でオデーサに帰り、仕事に必要なものを持ち帰りました。すぐに彼女は女性達のネイルにペイントし始め、これによって皆は、わずかでも日常生活を取り戻すことが出来ました。同時に彼女はオデーサに残してきた両親のことを心配しています。ことに父親はかなりひどい病気です。「私たちはここにいられて安心です。でも家に帰れればさらに幸せです」とマリーナは言っています。
このような気持ちは、バティチ避難所で暮らす女性達皆が共通して持っているものです。避難民70人の90%は女性ですが、だれもモルドバに長く滞在したいと思っていません。皆、帰国がかなうよう平和を願っています。
モルドバ中央のストラセニ地方では、UN Womenが別の仮設難民避難所を訪ねました。そこはもともと子どもや若者のためのレクリエーション施設でしたが、現在は女性・子ども60人近くを収容しています。
41歳のスネジャナ
戦争が始まる前、41歳のスネジャナは、海のそばで平和で幸福な生活を送っていました。彼女は、オデーサで自営のヘアカラリストだったのです。一日で人生が変わってしまうなど想像したこともありませんでした。「爆撃のため子どもたちは眠れず、皆疲れ果ててしまいました」と彼女は語りました。「ウクライナを離れる以外に安全を確保する方法がありませんでした」国境にたどり着くまで、彼女は子どもたちが乗っていることを分からせるため窓を開けたまま運転しました。「国境を越えて初めて楽に呼吸が出来ました。私には行くところがありませんが、今はモルドバの親切な人たちのおかげで、必要なものはすべて足りています」と彼女は言っています。
UN Womenと国際移住機関(IOM)は避難調査を行い、国境の入り口・出口、トランジットスペース、受け入れ施設や個人的な宿泊場所で3,000人の難民にインタビューしました。調査によると、難民の大半はウクライナから逃げてきた女性で、インタビューした難民の81%を占めています。女性の平均年齢は40歳で、60%の女性は30-49歳でした。女性は大きな育児の責任を負っており、これに家族離別、限られた財源などの重荷が加わっています。83%の女性が少なくとも18歳以下の子ども一人と一緒で、多くは子ども一人(44%)か二人(34%)を連れています。
「ジェンダー平等、年齢、多様性の視点を分野横断的な難民対応にとり入れることはとても大切です。これによって、女性・少女・少年-ことにリスクが高かったり、取り残されている人たち-は、救援物資や、サービス、情報に平等にアクセスでき、その恩恵を受けられるのです」とモルドバのドミニカ・ストジャノスカUN Women代表は説明しています。
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会