「シマ・バフース国連女性機関(UN Women)事務局長が来日、WAW!で『課題に真正面から取り組もう』と題して基調講演」
2022年12月19日
2022年12月7日
2022年世界女性会議(WAW!)は、ジェンダー平等を多国間アリーナの最前線に置くという私たちの共通のコミットメントの証です。これは人権の問題であると同時に、持続可能な開発目標を達成するための重要な道筋でもあります。
WAW!は、環境、気候変動、エネルギー、金融、公共政策、公安などの主要な議題について、女性と少女が果たすことができ、また果たさなければならない独自のリーダーシップの役割について話し合う良い機会です。
SDGsの2030年のゴールまであと半分近くになりました。 あと7年。現在の進歩のペースでは、ジェンダー平等を達成するのに7年ではなく、300年もかかると申し上げなくてはなりません、大変悲しいことです—これは、差別的な法律を取り除き、女性と少女の法的保護に存在するギャップを埋めるのにかかる時間の最新の見積もりです。今日ここにいる私たちの誰もが300年も待ちたくないと思われていると確信します。
激しい紛争、紛争による強制的避難、気候緊急事態の増大、世界的パンデミックの影響、そして声高な反フェミニスト運動は、女性が今まで勝ち得てきた権利を後退させました。これらの危機は、女性と少女に最も大きな打撃を与えました。
このような事実には疑いの余地がありません。あなたがたがここにいらっしゃるのは、このような状況をごぞんじだからです。それでもなぜこの重要な会議が緊急に必要なのか、例をいくつか挙げながらご紹介したいと思います。
女性に対する暴力は広く蔓延しているため、11分ごとに世界で1人の女性または少女が家族の誰かに殺されています。今日皆様にお話ししているこの11分間でさえ, そのような死によって汚点がつけられているのです。そして、その後11分ごとに同じことが続いていきます。女性に対する暴力に終止符を打つまでは… 私たちは、「女性に対する暴力撤廃のためのグローバルな行動の16日間」の真っ只中にいます。私は皆さん全員に、統計をよくご覧いただき、女性と少女に対するすべての暴力にきっぱりと終止符を打つためにあなた自身が行動し、それを高めていっていただきたいと切に願います。
世界では、3億8,000万人以上の女性と少女が1日1.90米ドル未満で生活し、極度の貧困状態にあります。これは日本の人口の約3倍であり、皆1日わずか1.90ドルで必死に生き延びようとしているのです。
COVID-19のパンデミックによる学校とデイケアの閉鎖により、世界中で推定5,120億時間の無償の保育がさらに増加し、これらすべてが女性の肩にかかってきました。
これは、苦しみ、貧困、不正に関する目を覆いたくなるような統計です。ただ良いニュースもあります。それは、私たちが問題がどこにあるかが分かっているだけでなく、解決策も知っているということです。私たちに課せられているのは、何をする必要があるかを考え出すことではなく、それを行う意志とコミットメントを動員することです。これが複雑すぎる、新しすぎる、または高すぎるという言い訳はありえません。私たちはこれを行うことができます、そして私たちができるということは、私たちはしなければならないということです。
私たちが目指すべき変化を推進できる3つの横断的分野領域に焦点を当てたいと思います。第一に、社会変革の強力な力としての女性と少女の権利を保護し、支援することです。第二に、女性が男性と同等に意思決定の場に参加でき、指導的地位につけるよう保証することです。第三に、ジェンダー平等追求のために私たちがしてきた様々な約束が資金調達に反映されることです。
私は、岸田政権がWAWの焦点を「新しい資本主義に向けたジェンダー主流化」と宣言されたことを高く評価します。社会の発展の中で女性が果たすユニークな役割と、女性のエンパワーメントの経済的利益を認識することは、とりもなおさず先見性とリーダーシップを示しています。また、日本政府が自国の民間部門に影響を与え、女性の参加とキャリアアップを推進し、その結果、管理職の女性が2012年の6.9%から2018年には11.2%にほぼ倍増したことに敬意を表します。また、日本の国会がこのアジェンダを強力に推進していることも称賛します。
ジェンダーの不平等は重大な経済的課題です。世界の生産年齢人口の半分を占める女性が経済的潜在能力を十分に発揮しなければ、私たちは皆、弱体化してしまいます。あらゆる種類の不平等が経済的悪影響をもたらす一方で、マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)の報告書は、女性の平等を推進することで、2025年までに世界の成長に12兆米ドルを追加する可能性があると指摘しています。なぜ私たちはそれらの経済的配当を無駄にするのでしょうか?私たちは女性に労働力や職場での平等を与えなければなりません。
第二に、差別的な規範、法律、慣行など、ジェンダー平等に対する長期的かつ構造的障壁に対処し、それを廃止しない限り、SDG5の進展は手の届かないままです。WAW!はまた、女性と男性を義務的な役割と責任に閉じ込めてきたのと同じ固定観念から抜け出すチャンスでもあります。私たちは、クォータなどの特別な措置を含め、使えるすべての戦術を駆使して、女性を意思決定や指導的地位につける必要があります。このようなクォータは一時的な措置とすることもできます。
ガラスの天井はまだそのまま残っています。世界的に見ると、民間部門では、管理職または監督者の女性はまだ3人に1人ぐらいです。女性は世界の国会議員の4人に1人しか占めておらず、地方自治体に選出された議員のわずか34%です。そして、権力の階層が高くなっていくほど、女性の数はさらに少なくなります。女性は国家元首と政府の長のわずか10パーセント未満しか占めていません。
最近発表されたSDGsの進捗状況に関する2022年のジェンダースナップショットは、その調査結果を通じて私たちに審議を急がなくてはならないことを示唆しています。現在の改善のペースでは、特に地方自治体の構造においていくつかの改善が見られましたが、女性が平等に代表となれるには、さらに140年(ほぼ1世紀半)かかります。
しかし、私たちの励みとなる一筋の燭光も見られます。日本には、WEPsと呼ばれる女性のエンパワーメント原則に署名した企業が300社近くあることを知り、大変うれしく思っています。WEPsは、職場、市場、コミュニティでジェンダー平等と女性のエンパワーメントを促進する方法についてのガイダンスを企業に提供しています。
国連グローバル・コンパクトとUN Womenによって設立されたWEPsは、国際的な労働基準と人権基準に裏打ちされており、企業がジェンダー平等と女性のエンパワーメントに深く関与して責任を持っているという認識に基づいています。これは、企業が2030アジェンダと国連の持続可能な開発目標のジェンダー平等の実現に貢献していく上で主要な手段となります。
WEPsコミュニティに参加することで、CEOは会社の最高レベルでこのアジェンダへのコミットメントを示せます。彼らは、女性をエンパワーするビジネス慣行を促進するために、複数のステークホルダーネットワークと協働することに同意しているのです。これには、同一価値の仕事に対する同一賃金、ジェンダーに配慮したサプライチェーンの実践、職場でのセクシャルハラスメントに対するゼロトレランスが含まれます。これらすべては、私が冒頭で触れた、貧困、ジェンダーに基づく暴力、そして正義に基づくインクルージョン(少数派が除外されたり差別されないこと)に取り組むものです。
ですから、私は、WEPsを取り入れて実施しようとする日本の経済界の強いコミットメントと、女性の経済的エンパワーメントを促進するという日本政府のコミットメントに勇気づけられています。これらの取り組みを組み合わせ、女性の参加を阻む構造的な障壁を取り壊し続けていけば、日本および世界中でCOVID-19後の回復を成功に導く重要な道筋を示すことができます。
ジェンダー平等は、開発と進歩のための特効薬に最も近いものです。これは、私たちの目標全体を成功に導く最も強力な手段です。ジェンダーの平等と安定、回復力、貧困削減、成長、社会的結束の間には密接な相関関係があります。したがって、SDG5はすべてのSDGsの基本です。ジェンダー平等がなければ、持続可能な開発目標のいずれも達成できません。
私たちがまずやらなくてはならないことは、どのような政策を選択するかが女性と男性にどのような影響を与えるかを理解するのに必要なしっかりしたジェンダー分析です。たとえば、女性に現金給付が与えられれば、貧困削減から子供の栄養と教育までの目標を達成するうえで、社会的セーフティネットがより効果的に機能することを示す十分な証拠があります。しかし、ジェンダーに応じた予算編成につながる包括的なシステムを持っている国はわずか4分の1です。これは明白な機会損失です。
私たちがここで会っている間も、紛争、気候、そしてCOVID-19が人類の存続に警鐘を鳴らしています。私たちは皆、恐怖におののきながらニュースを読んでいるのです。ジェンダー平等に関心を持つ私たちは、厳しい統計が発する絶え間ないドラムビートの警報に耐えています。でも私たちは相哀れむためにここに集っているのではありません。私たちはロードマップを持っていると主張するためにここにいるのです。私たちには、女性と少女を潜在能力が最大限に発揮できるようエンパワーすることが、私たちの共通の課題を解決する鍵であることをわかっています。私たちは、政治的意志、国民のコミットメント、そして行動の加速に大きな変化を起こさなければならないことも理解しています。そして、私たちはまさにそれを要求していきます。
日本は2023年にG7の議長国に就任します。私は日本に、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントをグローバルなアジェンダの中心に据えるよう呼びかけます。日本が岸田総理のリーダーシップの下、まさにそれを実施なさると確信しています。また、日本は国連安全保障理事会の議席も獲得しており、世界が直面している危機の中で女性と少女を助けるために、世界中の女性、平和、安全に取り組むことを呼びかけます。
UN Womenは、これらの課題に正面から取り組んでゆく日本の揺るぎないパートナーであり続けます。
この会議の実りある議論と、日本が、世界がまさに必要としている変化をもたらす上での重要なリーダーシップをとられることを楽しみにしています。
Speech: Tackling challenges head on | UN Women – Headquarters
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会