パキスタンの洪水被害における女性や少女への支援強化

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2023年2月9日

2022年12月/21日

著者:アストリッド・ペルテュゼル

パキスタンのメンタルヘルス団体「ロザン」のシニアマネージャーを務めるフォウジア・ヤスミンさんは、危機の際に女性や少女が必要なサポートを受けられるようにするために、「救援支援プログラムは、災害時の女性や少女の脆弱性に対処できるように設計する必要がある」と述べています。

パキスタンで洪水の被害を受けた住居(2022年8月)写真提供:ロザン

パキスタンでは2022年半ばに始まった壊滅的な洪水により1,500人以上が死亡、800万人近くが避難を余儀なくされました。いまだに水没したままの地域に多数の人が取り残され、避難所、食料、きれいな水、薬がない状態が続いています。この災害の中、女性と少女は、自分たちの安全に対するさらなるリスクに直面しています。

「インフラの破壊と世界的な資源不足によって遠隔地まで行くことができません。洪水のために医療制度や地域の支援が危うくなり、そのため女性と少女が暴力の危険にさらされています」とフォウジアさんは説明します。

国連女性に対する暴力撤廃信託基金(UN信託基金)の資金援助を受け、ロザンはパキスタンのハイデラバードとスククールの両地区で、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた女性が、避難していたシェルターから出る際の制度的支援を改善するプロジェクトを実施しています。このプロジェクトでは、サービス提供者の能力を高め、シェルターを含む特別な支援サービス、医療、法律、心理的な支援、さらには被害を受けた女性に対してシェルターを出た後の就労や起業を目指す職業訓練などを提供できるようにすることに重点を置いています。

2019年以降、女性が主導する組織であるロザンは、ドメスティックバイオレンスの被害者に対する否定的な認識を変え、被害者が安全に地域社会に戻れるようにするための啓蒙活動も行っています。被害者に適切に対応できるように、これまでに72人のサービス提供者に倫理指針とプロトコルに関する研修を実施しました。

しかし、洪水による破壊でロザンの活動やサービスには大きな支障が生じました。「地域の状況や課題を理解している地元に根差した組織が、女性や少女に特有のニーズに対応することが非常に困難でした」とフォウジアさんは言います。

利用できる支援サービスが洪水によって減少する一方で、支援サービスに対する需要が増加しています。緊張、恐怖、不確実性の高まりと収入の喪失が相まって、女性や少女に対する暴力、特に身近なパートナーや男性の家族による暴力が増加していいます。食料品やその他の必需品をめぐる争いに端を発した、ハラスメントや性的暴力の事例も報告されています。食料品の入手が困難になるにつれて、特に少女は、性的搾取や「家族の食料を買うためのお金と引き換えに」強制結婚などの暴力を受けるリスクが高くなるとフォウジアさんは続けます。 

国連信託基金の支援により、ロザンは女性と少女のニーズ評価に基づいて洪水救援活動を展開し、被災者キャンプや一時避難所で暮らす人々にディグニティーキット(女性の尊厳を守る必需品のキット)や基本的な医療品、生活必需品を提供することができました。またロザンの心理学専門チームは、感情的・心理社会的な支援を提供し、ストレスやショックに関わる問題への対処を支援しています。

1996年に設立され、国連を代表してUN Womenが管理する国連女性に対する暴力根絶信託基金(UN Trust Fund)は、女性や少女に対するあらゆる形態の暴力の根絶を目的とした唯一の世界的な助成金制度です。設立以来、国連信託基金は140の国と地域で646のイニシアチブに2億1,500万ドルを供与してきました。

(翻訳者:結城直美)

Stepping up for women and girls during the flood crisis in Pakistan | UN Women – Asia-Pacific

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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