国際女性デーによせて:給与格差解消を推進するために知っておくべきこと
2024年3月11日
2024年2月22日
世界中の労働者が給料日を心待ちにしています。しかし、給料日は安堵感や満足感、喜びをもたらす一方で、職場における男女間の根強い不平等を痛感させるものでもあります。
男女間の賃金格差は20%で、これは女性労働者の賃金が男性の80%であることを意味しています。有色人種の女性、移民の女性、障がいを持つ女性、子どもを持つ女性にとって、その格差はさらに大きくなっています。
賃金格差の累積的な影響は、特に危機の際に、女性、その家族、社会に実質的かつ日常的な悪影響をもたらしています。COVID-19の広範な影響により、最大9,500万人が極度の貧困に陥り、世界の女性の10人に1人が極度の貧困状態におかれました。この傾向が続けば、2030年までに3億4,240万人の女性と少女が1日2.15ドル以下で暮らすことになります。
同一価値労働同一賃金とは?
ILO同一報酬条約が定義する「同一価値労働同一賃金」とは、すべての労働者が同一の仕事に対してだけでなく、同一の価値をもつとみなされた異なる仕事に対しても同一報酬を受け取る権利があることを意味しています。男女の仕事は、資格、技能、責任、労働条件が異なっていても同じ価値を持ち、当然同じ賃金が支払われるべきであるため、この区別は極めて重要です。
2020年、ニュージーランドは同一賃金修正法案を可決し、慢性的に賃金の低い女性優位の産業を含め、異っていても同等の価値を持つ仕事に対して女性と男性に同等の賃金を支払われることを保証しました。
また、報酬とは基本給以上のものであり、収入を構成するすべての要素を含むものであることを認識することも重要です。これには時間外手当、ボーナス、出張手当、自社株、保険、その他の手当が含まれます。
男女間の賃金格差はなぜなくならないのでしょう?
男女間の賃金格差は、深く根付いた不平等から生じています。女性、特に移民女性は、インフォーマル・セクターに多く従事しています。路上販売から家事サービスまで、コーヒーショップの店員から自給自足の農業まで、周りを見渡してみてください。女性たちは、しばしば労働法の適用外となる非正規の仕事に従事し、低賃金で危険な労働環境に置かれ、社会的な恩恵も受けられないでいます。このような女性労働者の劣悪な環境は、男女間の賃金格差を永続させる要因となっています。
また、世界的に見ても、女性は男性よりも3時間多く、日常の介護労働を担っています。これには、料理、掃除、薪や水汲み、子どもや高齢者の世話などの家事が含まれます。介護労働は、家族、コミュニティ、経済の繁栄を支えているにもかかわらず、過小評価され、認識されていないのが現状です。UN Womenの無報酬介護計算器で、あなたの日常の負担を計算してみてください。
母性ペナルティは賃金の不平等を加速させ、働く母親は低賃金に直面することになります。母親の低賃金は、労働時間の短縮、低賃金になりがちな家族にやさしい仕事への雇用、母親のキャリアにペナルティを科すような採用や昇進の決定、労働市場から離れた女性の職場復帰を支援するプログラムの欠如と関連しています。
差別的で伝統的な性別役割分担も賃金格差に拍車をかけています。ジェンダーの固定観念は、伝統的に男性が支配してきた職業から女性を遠ざけ、しばしば「非熟練」または「ソフトスキル(評価の尺度を明確に定義しづらいスキル)」とみなされ、それゆえ賃金が低いとされる介護中心の仕事に女性を向かわせるのです。
さらに、女性が指導的役割や高賃金の地位を得ることを妨げる差別的な雇用慣行や昇進の決定が、男女間の賃金格差を持続させているのです。
なぜ賃金の平等が緊急課題なのでしょうか?
賃金平等が重要なのは、それが顕著な不公正であり、何百万人もの女性と家族が、根強い貧困と機会格差のある生活を強いられているからです。現在のままでは、2030年までに3億4,000万人以上の女性と少女が絶望的な貧困に陥る危険性があり、その年までに4%が極度の食糧不安に苦しむ可能性もあるのです。
また、女性は男性よりも社会保障の適用率が著しく低いのです。この格差は、女性の労働力参加率の低さ、一時的で不安定な労働の多さ、非正規雇用の多さを大きく反映しています。これらすべての要因が、女性の所得、貯蓄、年金の 低さ 、そして老後の男女間の貧困格差につながっています。
何をなすべきでしょうか?
より多くの女性が貧困に陥る中、同一賃金と賃金の公平性を求める闘いは新たな緊急性を帯びています。なぜなら最も収入の少ない人が収入格差によって最も大きな被害を受けているからです。
米国では、白人男性の収入1ドルに対して、黒人女性は63.7セント、先住民女性は59セント、ラテン系女性は57セントしか得ていません。金銭的に余裕がない場合、低賃金によって女性や家族が食い扶持を得たり、安全な住居を確保したり、重要な医療や教育を受けたりすることができなくなります。そしてこれが何世代にもわたって、貧困の連鎖を永続させる可能性を生み出しているのです。
女性労働者を男性労働者と同等の立場に置くことが急務です。介護赤字が迫り来る瀬戸際にある世界では、不可欠な医療・社会的ケアサービスを提供する労働者の67%が女性です。政府は、教育、ヘルスケア、社会サービスなど、女性が主に従事しているすべての仕事を含め、ケア分野における低賃金で過小評価されている仕事の見直しに取り組まなければなりません。
世界の賃金格差について、データは何を示しているのでしょうか?
賃金不平等は是正が難しい普遍的な問題です。女性の教育や労働市場への参加は大きく進展しているにもかかわらず、男女間の賃金格差の解消は遅々として進んでいません。このペースでは、経済的な男女平等を達成するのに300年近くかかると推定されます。
女性労働者の平均賃金は、すべての国、すべての教育レベル、すべての年齢層において、一般的に男性より低く、女性の平均賃金は男性の80%です。男性優位の産業に従事する女性は、女性優位の産業に従事する女性よりも収入が多いかもしれませんが、男女間の賃金格差はすべてのセクターで続いているのです。
男女間賃金格差の推計値は、地域間や国内でも大きく異なることがありますが、高所得国は低・中所得国に比べて賃金格差のレベルが低い傾向にあります。しかし、ジェンダー賃金格差の推計は、特に発展途上国においては、女性労働者の割合が高いインフォーマル経済に関する情報が不足しているため、データが示すものよりも悪い可能性があります。
詳しくは、東部・南部アフリカにおけるジェンダー賃金格差に関するUN Womenの報告書をご覧ください。
次の課題は?
ジェンダー賃金格差の是正には、すべての人々にディーセント・ワーク(働きがいのある仕事)を推進する一連の対策が必要です。これには、非正規経済の正規化を促進し、非正規労働者を法的かつ効果的な保護の傘下に入れ、各自が自分の利益をよりよく守れるよう彼らをエンパワーすることが含まれます。
労働者の団結権と団体交渉権を確保することは、解決策の重要な部分です。女性が雇用主や組合のリーダーシップをとれるようになり、職場における男女平等のための包括的な枠組みを確立する法律を可能にしなければなりません。
UN Womenの経済エンパワーメント・チーフであるジェミマ・ンジュキ博士は、「ジェンダー賃金格差は、雇用者、政府、労働組合を含むすべてのステークホルダーが全責任を負い、これらの課題に取り組むために手を携えることが必要です。女性は、同じ価値の仕事に対して同じ賃金を受け取る資格があります」と述べています。
https://www.unwomen.org/en/news/stories/2020/9/explainer-everything-you-need-to-know-about-equal-pay
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会