ケニアで多発するフェミサイド、 女性に対する暴力根絶に向けて早急な対策を!
2024年3月14日
2024年2月9日
1月27日、ケニアの首都ナイロビをはじめとする主要な都市で、フェミサイド(性別を理由として女性や少女が標的にされる殺人)と女性に対する暴力の根絶を求め、「私たちは人間だ」、「一人ひとりの名前を言って」、「私たちを殺さないで」などと書かれたプラカードを掲げ、数千人の人々が抗議のデモ行進を行いました。
「ケニア政府も女性と少女に対する暴力防止の取り組みを行ってはいますが、2016年以降、ケニアでは少なくとも500人以上の女性と少女が殺されました」と、新聞報道に基づいて、こうした女性の殺害を追跡しているデータ関連組織の地域ネットワークであるアフリカ・データ・ハブは指摘しています。
データには調査期間中に起こったすべてのフェミサイドが含まれていない可能性が高いとして、「それぞれが特別な事案というわけではなく、同じようなパターンが繰り返し発生していることがわかっており、この問題がより深刻で制度的なものであることを示しています」と同団体。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)とUN Womenの報告書によると、現在または過去に親密なパートナーであった人が女性殺害の加害者になることが最も多く、親密なパートナーや家族が関連した殺人の平均55%を占めています。
「2024年1月だけで少なくとも10人の女性が殺害されたという衝撃的な現実をみても、既に深刻であるこの状況がさらに悪化していることがわかります」と、ジェンダーに基づく暴力に関するアナリストであるメアリー・ンジェーリさんは言います。「失われた命の1つ1つが、私たちが根絶しようとしている制度的な問題を明確に示す指標です」。
通常、身体的暴力や性的暴力の致命的な終点がこうした殺害であり、それが、男性が女性を支配したり権力をふるったりすることを強制する社会規範によってあおられていると、報告書は述べています。ケニア全土でみると、結婚経験のない女性で身体的暴力を受けたことがある人は全体の20%であるのに対して、結婚経験のある女性では、その割合は41%になります。
行為がエスカレートしていくということは、「被害者が声をあげたときにそれを信じ、支援することがいかに重要かを示しています」。そうすれば、暴力がエスカレートして殺人に至るかなり前の段階でさらなる暴力を防ぐことができる、とUN Womenケニア事務所のアンナ・ムタバティ所長は言います。
ケニア権利・教育・啓発センターのワンゲチ・ワチラ事務局長も同じ意見です。
「私たちは、女性と少女に対する暴力の常態化に決して加担することなく、女性と少女が安全で保護され、尊重される環境づくりに向けて、国を挙げて取り組まなければなりません」。
UN Womenは、警察関係者に専門的な研修を提供するなど、ケニアにおいてフェミサイドやジェンダーに基づく暴力を防止する活動を主導しています。このようなプログラムによって、警察官が、被害者中心の法執行アプローチを進めながら、潜在的なフェミサイドの兆候や女性が直面している特有の課題を認識することができるようになります。
UN Womenは、ケニアの国家警察と運輸安全局の600人以上の職員に加え、インフォーマルな運輸部門の関係者にも研修を実施しました。
加えて、カウンセリング、法的支援、安全なシェルターへのアクセスなどを提供している地元のグループと協力して、ジェンダーに基づく暴力の被害者を支援しています。ケニアにある5つの市民社会諸組織とのパートナーシップを通じて、これまでに4万人以上の被害者に心理社会的支援を提供し、約1,000人に法的支援を行ってきました。
ケニア政府は、「平等を目指す全ての世代の行動連合」のグローバル共同パートナーシップの一環として、2026年までにジェンダーに基づく暴力(GBV)を終わらせると約束しています。また、ケニアには、ジェンダーに基づく暴力に関連する強固な法的枠組みがあり、効果的に施行されれば、こうした暴力を大幅に削減することができる法律も多数あります。
「信じがたいことに、こうした法律、公約、政策、効果が期待できる方法があるにもかかわらず、女性と少女に対する暴力が依然として蔓延しています」とムタバティ所長。
「フェミサイドは最も残忍で極端な暴力の現れです。予防は、ジェンダーに基づく暴力、とりわけフェミサイドに対する最善の策です」と付け加えました。
ムタバティ所長は、ケニアでは社会規範がいまだにフェミサイド防止に対する障害となっており、市民の認識を変える必要があると指摘しました。
「殺人や被害者非難の常態化に油を注ぐようなメディアの報道やSNSのブロガーなどを含め、偏った社会の認識を変えるためにやるべきことがたくさんあります。社会的規範の変革には、啓発、教育、沈黙を破る努力など、多角的なアプローチが必要です」。
「すべての組織と個人が、こうした努力をしなければなりません」とムタバティ所長は付け加えました。
(翻訳者:松本香代子)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会