内戦下のスーダンで性暴力による予期せぬ妊娠と闘う女性たち

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2024年5月10日

2024年4月10日

2023年4月中旬にスーダン国軍(SAF)と即応支援部隊(RSF)の間で内戦が勃発したとき、18歳のアムナ・サリフ*さんは、家の中にとどまることが安全な選択だと考えました。

しかしある日のこと、誰かがドアをノックしました。

「パニックになりながらも震えながらドアを開けると、そこには兵士が数人立っていました。彼らは家の中に入ってきて私が1人だとわかると、銃を突き付けながら代わる代わる私をレイプしたのです」と、サリフさんは涙ながらに話しました。「兵士たちは4日間家から出て行かず、私は毎日レイプされました」。

ようやく兵士たちが去っていった後、サリフさんは燐人の助けを借りて、市内のもっと安全な場所にある友人の家に避難しました。

サリフさんは、「スーダン国外に住む別の友人にしか事情を話せませんでした。彼女は、お金を送ってくれて、すぐに市外へ逃げるよう忠告してくれました」と、話しました。市内から逃れたサリフさんは、スーダン各地をまわって、ようやく国内避難民の避難所にたどり着きました。

国連人権高等弁務官の報告書によると、スーダンでは2023年12月中旬時点で、少なくとも118人がレイプ、集団レイプ、レイプ未遂などの性暴力の被害に遭っており、その中には19人の子どもが含まれていました。

2023年5月2日、「ファーシル性と生殖に関する健康センター」で診察を待つ人たち。水、排水やトイレなどの衛生設備、ヘルスケア用品をユニセフが提供。 写真:ユニセフ/モハメッド・ザカリア

また、性暴力の多くは家の中や路上で行われ、偏見、司法制度への不信、司法機関の崩壊、報復への恐れから、自ら関係当局に通報できた被害者はわずか4人だったことも報告されています。

サリフさんは、避難所に着いて数か月後のある日、妊娠していることに気づき愕然としました。

「適切な医療も必要な栄養も確保できない避難所での妊娠は、本当に大変でした」と、サリフさんは話しました。

カッサラ州にあるスーダン研究開発機構(SORD)とポートスーダンを拠点とする女性啓発団体「AWOON」は、UN Womenと連携して、スーダンの国内避難民、とりわけ性暴力やジェンダーに基づく暴力の被害で傷ついた女性たちのケアを行っています。

内戦が始まって1年、性的虐待によって妊娠した女性と少女のケアがSORDの重要な任務の1つになっています。

また、AWOONで活動する心理療法専門医のナヒド・アハメドさんは、同団体はジェンダーに基づく暴力や性的暴行のサバイバーに寄り添う活動をしてきたと話します。

「私たちは性暴力の事例を親身になってフォローしていますが、女性たちの多くは自分の経験について話そうとしません。彼女たちには、私たちが提供する集中的な精神的サポートと、場合によっては投薬治療が必要です」。

AWOONと「紅海州緊急救命室」は、UN Womenの協力のもと、女性がさまざまな人道支援を受けられるよう支援する「女性の危機管理室(WSR)」を6か所開設しました。WSRは、医療従事者がいない場合でも妊婦が昔ながらの産科医療を受けられるようサポートしたり、避難民に避難所や、食糧、水を提供したりしています。

アハメドさんは、「私たちは、妊娠している女性に産婦人科を紹介し、きめ細かくフォローしています。また、性的暴行によって妊娠した女性の精神面のサポートにも取り組んでいます」と、話しました。

また、WSRは、市民社会組織がネットワークを作り、情報を入手、共有する場でもあり、地域の協力で集められた物資やサービスの配給拠点でもあります。WSRの各委員会では、前線地域からの民間人の避難を調整し、医療施設の電力を回復させるため電気系統を修理し、行方不明者を捜索して家族と再会させる活動をしています。

この枠組みは、女性と最前線で対応する人たちに必要な援助を提供するものですが、「有効性をさらに高めるには、技術面、財政面で多くのサポートが必要です」と、スーダン駐在のUN Women 人道支援担当者は話しました。

OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、スーダンでジェンダーに基づく暴力に関するサービスを必要とする人は、内戦開始以来100万人以上増加して420万人に達し、年内には690万人に達すると予測されています。

SORDが運営するカッサラ州のWSRでは、紛争下で起きた性的およびジェンダーに基づく暴力を記録する活動をしています。また、女性主導の団体と連携し、被害を受けた女性が必要なサービスを利用できるよう取り組んでいます。ここで開催されるカウンセラーによるセラピーには、サリフさんをはじめ、60人を超えるジェンダーに基づく暴力のサバイバーが参加して心理的なサポートを受けています。

サリフさんは妊娠後期になると、出産まで身の回りの世話をしてくれるホストコミュニティの家庭に移りました。

そして出産後は、自分自身が養子であり、児童性的暴行の被害者として辛い子ども時代を過ごした経験から、赤ちゃんを里親に預けることを拒否しました。

サリフさんは、「子どもに私と同じ経験をさせたくありません。それに、毎日赤ちゃんに会いたいのです」と、話しました。

*身の安全のため仮名を使用しています。

(翻訳者:祖父江 美穂)

Women grapple with unplanned pregnancies after sexual violence in Sudan war | UN Women – Headquarters

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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