アフガニスタンの女性に自分を信じる力を与えるストーリーテリング研修
2024年5月23日
フィロザさん*は、ジャーナリストとして自分の仕事に情熱を注いでいました。しかし、彼女の人生と仕事は2021年8月15日のタリバンの首都制圧によって大きく狂わされてしまいました。
「仕事を続けたかったのですが、すぐに尾行され、追いかけられるようになりました。政権崩壊以後の数か月、私は外国の報道機関で働いていましたが、殺害や誘拐を予告する匿名の脅迫メッセージを受けるようになりました。だから今は身を隠して暮らしています」と彼女は書いています。
フィロザさんのストーリーは、UN Womenアフガニスタン事務所が行う被害についてのストーリーテリング研修の参加者が書いた100本以上の体験談のうちのひとつで、それら体験談の一部は、3月11日~22日にニューヨークとジュネーブでUN WomenとIOMが共催した写真展「アフガニスタン女性の生活を垣間見る苦闘とレジリエンスのストーリー」に展示されました。
女性が大学教育やほとんどの職業に就くことを禁じられているアフガニスタンで(国連ウィメン日本協会注:アフガニスタンでは、2021年からのタリバン統治により、少女は中学校以上の学校に行くことを禁止されている)、現地に住む女性ジャーナリストとそれ以外の女性の合わせて147名が、2023年後半に行われたこのストーリーテリング研修に参加しました。
「この大きな影響力を持つ研修会は…困難な状況下にあるアフガニスタン女性の支援に対する国連の強い決意をはっきりと示しています。この研修は、私たちを再び学びの道へと導いてくれました。アフガニスタンの女性を完全にエンパワーするには、こうした取り組みがもっと必要であることは明白です」と研修の参加者の一人であるナーラさん*は言います。
元海外特派員で現在はUN Womenのコンサルタントをしているジェン・ロスさんがオンラインで配信したこの4モジュールからなるこの研修では、さまざまな被害の報告やストーリーテリングの手法の概要が紹介されました。また、暴力の被害者を含むアフガニスタン女性にインタビューをするときの適切な質問の仕方、インフォームドコンセントを得る方法、安全と道徳的配慮を確保する方法などが取り上げられました。参加者は、2人1組になってタリバンの首都制圧が生活にもたらした影響について互いにインタビューをする対話形式の演習を行い、その後、特集記事やインタビュー相手の視点に立った一人称での体験談を書くことを中心にした最後の研修に臨みました。
「指導員として経験した中でも、これは最も喜びを得られた研修でした」とロスさんは言います。「女性たちは学べることに胸を躍らせて熱心に取り組み、大いに感謝し、もっと研修を受けたいと言っていました。参加者がエンパワーされていくのがよくわかりました。同時に、皆さんのストーリーを読むと胸が締め付けられます。女性は、このような虐待や制限に直面するべきではありません」。
このオンライン研修は英語で配信され、教材はすべてダリー語で用意されました。最終課題として、参加者はアフガニスタン女性に体験談を語ってもらうインタビューをします。全部で104本の課題が提出され、その中でも優れている80本は、翻訳、編集を経て、UN Womenアフガニスタン事務所のウェブサイト After August に掲載されました。
「現在のような困難な状況の中で、女性ジャーナリストは自分の能力を高めるための研修を受けることができません。しかし、UN Womenは…女性、特にジャーナリストが研修を受ける道を開いてくれました」と研修に参加したグールさん*は言います。「このプログラムは、女性に対する暴力について書き、アフガニスタンの女性が生涯にわたって苦しんでいることについて声を上げる力を私たちに与えてくれました。UN Womenの女性に対する取り組みに本当に感謝していますし、今後もこうした有益なプログラムを続けてほしいと思っています」。
プログラム期間中に参加者同士の間にできたつながりは、女性を支援する女性のコミュニティづくりへと発展しました。皆で力を合わせ、研修を受けてインタビューの仕方と効果的なストーリーの語り方を身に着けたジャーナリストと活動家のネットワークを作っています。参加者の中には、 ヘラートの地震後のこと や 冬に備えるための現金援助を受ける女性についての体験談を集めるためにUN Womenによって雇用された人もいます。
「アフガニスタンの女性にはそれぞれにストーリーがあり、他の誰にも語ることのできない独自のストーリーに触れることができます。語り、行動し、学ぶ能力がどんどん失われていく状況において、アフガニスタンの女性が自分の言葉で自分のストーリーを語れる機会と場を提供することは、抵抗の記録を作ることになります」と、UN Womenアフガニスタン事務所のアリソン・ダビディアン特別代表は言います。
新しいストーリーの中には、ジャーナリストのアテファさん*の次のような言葉も見られます。「ジャーナリストとして働くことは、いつ地雷を踏んで空中に吹き飛ばされるか分からない地雷原を歩くようなものだということはわかっています。でも、私はこの危険を受け入れ、確固たる決意を持って自分の仕事を続けます。アフガニスタンの少女のお手本になり、どんな状況になっても私たちは決して屈しないということを証明したいのです」。
タハール州出身の議会担当記者だったソハイラさん*も、先日の写真展で取り上げられました。「アフガニスタンの多くの報道機関は、女性の従業員やジャーナリストを雇いません。それでも私は失望することなく、アフガニスタンの女性の声を聴いてもらい、それが抑圧されないよう、女性のストーリーを集め、オンラインプラットフォームを通じて紹介し始めました。アフガニスタンの女性のために、女性として私ができるせめてものことです」。
また、研修参加者のアニサさん*は、この研修が人生を変えてくれたと喜んでいます。「感謝の気持ちを示すのに言葉では足りません…自分自身を信じ、夢をあきらめないよう力づけてくれてありがとうございます!私の人生を照らし、最高の私になれるよう力づけてくれて感謝しています」。
* 身の安全のために参加者の名前はすべて仮名にしてあります。この記事と展示会で使用した写真も、安全確保のためにあえてストーリーと一致しないようにしています。
(翻訳者:早乙女由紀)
Storytelling training inspires Afghan women to believe in themselves | UN Women – Asia-Pacific
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会