「戦時下に女性が殺されるのは、必ずしも銃弾や爆弾のせいではありません」 スーダンの活動家、内戦下の人道危機について語る

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2024年6月7日

2024年4月10日

「ここ20年間、スーダンの女性たちは交渉や調停の訓練を受けてきました。しかし、それは、女性が学びたいからというのではなく、あまりに多くの危機が生じていたからです」と、国際民間企業センター(CIPE)スーダン代表のシャザ・バラ・エルマハディさんは言いました。 

南スーダンとの戦争やダルフールでの紛争、そして、その後の大きな国内の動乱の中、女性と女性団体は交渉に携わってきました。

こうした女性団体は「必要な能力の向上という点では大きく貢献しました」と、エルマハディさんは言いました。「ただ、その結果を見てみると、上層部における女性の参加はほとんどありません」。

スーダンの内戦が始まって4月15日で1年になります。この危機の中で、女性ばかりが暴力を受け、移住を強制され、人道的な支援を必要とする一方で、紛争終結に向けた協議には女性は平等に参加できていません。

3月24日、ニューヨークのUN Women本部で開催された第68回国連女性の地位委員会のサイドイベント「スーダンの紛争下にある女性と少女の声と力を広げる」に出席するアナン・アフマドさん(左)とシャザ・バラ・エルマハディさん(右) 
写真:UN Women/ライアン・ブラウン
 

エルマハディさんによると、2023年後半の交渉では、交渉の場に参加する女性の枠を増やすよう試みたものの、交渉人に占める女性の割合は30%にとどまりました。

彼女はこう言います。「女性が交渉の場に参加すれば、和平プロセスはもっと持続可能なものになると研究者は言っています。でも、そんなことは考慮されていませんし、女性を参加させたいと思っている人は誰もいません」。

オムドゥルマン市で困っている人を支援する緊急支援室プログラムを創設した若い活動家、アナン・アフマドさんによると、人道援助へのアクセスに関する交渉の間、女性は完全にそのプロセスの外にいました。

その間も、スーダンの女性は世界最悪の人道的困難に直面しています。

「まさに今、飢餓が迫ってきています」とアフマドさんは言いました。そして、人道支援物資や女性のディグニティ・キット(国連ウィメン協会注:生理用品、下着、懐中電灯、石けん等々、女性の尊厳を保つために必要な生活必需品)の配布が紛争当事者によって頻繁に妨害、阻止され、紛争が妊娠のケアから性的暴力までのあらゆることに影響していると語りました。

「被害者はレイプを告発できないのです。報復が怖いからです」。

UN Womenは、スーダンで緊急人道計画を実行している女性団体と提携し、数百万人に命を守る支援を提供する現地のパートナーを支援してきました。しかし、支援を必要とする人は、支援を届けるスピードをはるかに超える速さで増えています。

「スーダンの女性は回復力(レジリエンス)が高く、何十年も平和と民主政治を取り戻すために戦ってきました。暴力におびえることなく暮らしたいと強く願っています」と、アジャラトゥ・ンジャイUN Womenスーダン事務所代表は言いました。「スーダンの女性はいつも民主的な統治の復活を求めています。この点を強調することが極めて重要です」。 

「女性は出産するための病院に行けず、死に直面した時に必要な血液を保存する冷蔵庫も利用できません」と、エルマハディさんは言いました。「戦時下に、女性が殺されるのは必ずしも銃弾や爆弾のせいではありません。基本的なニーズをかなえる方法が狭められることで殺されてしまうのです」。

女性に紛争を解決する政治的な力がないこと、厳しい人道的課題に直面していることという2つの危機は、互いに影響を及ぼし合って複雑化する可能性があるとエルマハディさんは言います。

「これらは現実的な問題です。女性が基本的な生活のニーズを満たせず、生きるか死ぬかの危機に瀕している限り、和平構築のプロセスや政治的解決の場面で女性が役割を果たすことについて語ることはできません。病院も、食べ物も、水も、電気もありません。そんな状態で政治的対話に参加しろと言えますか。現実的ではありません。まず、基本的な人としてのニーズを満たす必要があります」。

紛争は2年目に入りましたが、アフマドさんとエルマハディさんにはかすかな望みが見えてきています。

「この戦争を起こしたのは2つの武装勢力の将軍ですが、銃声を止めるのは、必ずしもこの2人の将軍ではないかもしれません。特に強力な市民運動があれば」とエルマハディさんは言いました。「それを築くことこそが必要だと思います」。

「私が希望を持っている理由があります。それは、人道援助へのアクセスを確保し、新しい解決策をもたらし、現地で市民を助けるために日々自分を犠牲にしている私たち若い世代の情熱です」とアフマドさんは言いました。

緊急支援室プログラムの一環として、草の根の団体、地域団体、国際団体からジェンダーバランスを考えて活動家を集めた「地域化拠点」が、事実上の意思決定団体としていかに機能しているかをアフマドさんは説明しました。

「異なるイデオロギー、異なる宗教、民族から女性を集めます」と彼女は言いました。「そして現地で人道的援助を届けるために協力し、互いに助け合います」。

緊急支援室では、女性は紛争における交渉術を学び、自分自身や他の人を守る方法を身に着けてもらいますとアフマドさんは言います。

「私たちは皆、スーダンの未来のリーダーを創るために戦略的に活動しています」と続けました。

2024年4月17日~18日に、スイス政府はベルンでUN Womenの第5回上位資金提供パートナー円卓会議を開催します。この会議では、UN Womenが、危機対応において、そして、機関間常設委員会を含む国連システムの中で調整の役割を果たす上で、迅速かつ効率的に行動する中核的な貢献を果たすことが不可欠であると示すことに重点を置きます。 

UN Womenの資金提供パートナーが集まることで、人道的活動における現地でのジェンダー適合、武装勢力や平和構築者との協力という実績ある構想を紹介し、人道・開発・平和の連携にジェンダーを体系的に組み込むことの費用対効果を強調する戦略的な機会になります。

(翻訳者:早乙女由紀)

https://www.unwomen.org/en/news-stories/feature-story/2024/04/women-are-not-necessarily-killed-because-of-bullets-or-bombs-sudanese-activists-describe-humanitarian-crisis-amid-civil-war

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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