LGBTIQ+の移民は、最初から「二級市民」として扱われるという特有のリスクに直面している:フィリピンの移民人権活動家レイ・ペレス・アシス氏へのインタビュー
2024年7月8日
2024年6月14日
世界的にジェンダー平等や権利に対する反発が深まる中、SOGIESC[性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)、ジェンダー表現(Gender Expression)、Sex Characteristics(性的特徴)の頭文字をとったもの]に基づく差別を経験している人に亡命を認めている国は、わずか37か国に過ぎません。UN Womenが発表した新しい論文によると、LGBTIQ+(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス、クィア)の移民は、移住のすべての段階において、人権侵害にあうリスクが高いことが指摘されています。UN Womenは、移住の専門家で活動家でもある、フィリピン、マニラ出身のレイ・ペレス・アシスさんに、この問題について伺いました。移民のためのアジア太平洋ミッション(APMM)でアドボカシーとキャンペーンのプログラムコーディネーターを務めるアシスさんは、最近、UN Womenが共催する「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)」の地域会合に参加しました。
アジア太平洋地域のLGBTIQ+移民は、どのような問題に直面していますか。
LGBTIQ+の移民労働者が置かれている不安定な状況の背景には、移民は二級市民という認識があって、そのように処遇されているという問題があります。それが移民、特に移民労働者の権利と自由を抑制し、健康、サービス、司法へのアクセスを制限したり否定したりする政策につながり、ますます虐待や搾取を受けやすい状況を作り出しています。
LGBTIQ+の移民に関しては、身の安全だけでなく、その性的指向や性自認に対する認識と支援も十分ではありません。移民先の国にLGBTIQ+に賛成する法律があったとしても、LGBTIQ+移民の多くは、その法律の存在自体を知らないか、存在は知っていても、移民もその対象になっているということを知りません。LGBTIQ+であることにはスティグマがつきもので、母国でも移民先の国でも、その存在や、自分たちの置かれた苦しい状況やニーズについて話し合う機会はほとんど、あるいはまったくありません。そのため、移民の多くは、自分のセクシュアリティについては口を閉ざすか少数の友人に打ち明けるに留め、政策や意思決定の場からは見えない状態にあります。
LGBTIQ+の人は、移住の各段階でどのようなリスクに直面するのでしょうか。
LGBTIQ+の多くは、母国にいるときから、複数の交差する形態の差別によって貧困や失業に直面しています。海外で仕事を探そうと「決めた」時点で、すでに労働移住に伴うさまざまなリスクに晒されているのです。
差別を受けたり、就職の機会や職を失ったりすることを恐れて、性的指向や性自認、ジェンダー表現、性的特徴を隠さざるを得ない人がたくさんいます。多くのトランスジェンダーの移民労働者が、当局から尋問やプロファイリングを受けたり、書類の提出を強要されたり、国の施設に収容されたりして危険に晒されています。職場や地域社会では、多くの人がハラスメントやいじめ、排斥などを経験しています。さらに、LGBTIQ+コミュニティの保護・支援施設には、移民が対象に含まれてないところもあります。
多様な性的指向、性自認、ジェンダー表現、性的特徴を持つ移民を、差別や人権侵害から守るにはどうすればよいでしょうか。
まず、多様なSOGIESCを持つ人を含むすべての移民労働者を、人権のある1人の人間として認めなければなりません。政府は、LGBTIQ+の移民労働者の存在を認め、その権利を尊重し、促進し、サービスと司法への平等なアクセスを提供し、彼らが自分とセクシュアリティを表現する自由を認める必要があります。LGBTIQ+の移民が安全な形でグループを作り、自分たちの要求を集団で主張し、あらゆる形態の差別や人権侵害からの保護にアクセスすることができれば、コミュニティはより安全で健全なものになります。
移民とLGBTIQ+の権利について、地域の人から権力者までボトムアップで認識を高め、教育を進めることも重要です。すでにSOGIESCを推進している組織では、LGBTIQ+の移民の視点を取り入れるとより効果的です。
また、LGBTIQ+の移民に対しては、自分たちにとって安全な場所を作るだけでなく、LGBTIQ+の当事者として、移民として、自分たちの置かれている不安定な状況の根本的な原因に積極的に取り組めるような、進歩的な組織に参加するか自分たちで結成してほしいと思います。
LGBTIQ+の移民に、プライド月間のメッセージをお願いします。
私は、さまざまな差別や人種差別、社会的排除と闘い続けるLGBTIQ+の移民労働者コミュニティに畏敬の念を抱いています。LGBTIQ+当事者として、移民として、自分たちの問題に継続的に関わり、積極的に発言し、安全な場所や支援と連帯のネットワークを作って拡大し、疎外されている他のコミュニティと共に、私たちの声を増幅させていきましょう。
(翻訳:松本香代子)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会