スポーツにおける女性:ファクトと数字

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2024年8月1日

中学2年生のステラさんの夢はボクシングの世界チャンピオンになること。
写真 UN Womenモルドバ事務所/Diana Savina

女子スポーツ界は、かつてない注目と評価を集め、今までの流れを変えるような変容を遂げています。

パリ五輪は史上最もジェンダー平等な大会となることでしょう。この画期的な出来事は、記録を塗り替え、固定観念を打ち砕き、次世代にインスピレーションを与えている女性アスリートたちの絶え間ない努力と目覚ましい活躍の証しです。 

フィールド内外におけるジェンダー平等に向けた前進を、私たちと一緒に深く見ていきましょう。

少女とスポーツ

●スポーツは、少女が人生を進んでいくのに必要なスキルを教えるためのすばらしい手段です。スポーツをする少女たちは、自尊心、自信、強靭性を培い、チームで動くことを学びます。彼女たちは、学校により長く通い、妊娠を遅らせ、より良い仕事に就く傾向が見られます。

フォーチュン500社の女性CEOの80%が、人格形成期にスポーツをしており、早い時期からスポーツに触れることが、女性の成長と、潜在能力を最大限に発揮する能力に大きな影響を与えることを強調しています。

Parity Now社が調査した世界の聴衆の92%は、少女が成長期にスポーツをすることの重要性に同意しており、61%は「非常に重要」だと考えています。

●明らかな利点があるにもかかわらず、社会的な期待や質の高いプログラムへの投資不足などいくつかの要因によって、女子は14歳までに男子の2倍の割合でスポーツから遠ざかってしまいます

メディアとスポーツ女子

●女子スポーツは現在、熱心なファンと投資家の両方を惹きつけ、かつてないほどの注目度の高まりを経験しています。

●2024年のパリ大会では、オリンピック放送機構(OBS)によって約35人の女性解説者が採用され、女性解説者の比率は40%近くまで上昇しています。これは、東京2020大会と比較すると80%近く、リオ2016大会と比較すると200%以上の増加です。

アメリカの女子ナショナル・バスケットボール・アソシエーションは、2年連続で2024年もゴールデンタイムに放送を行います

●メディアによる女子スポーツ報道率は、30年間わずか5%と低迷を続けた後、2019年以降3倍に増加し、2022年には16%でした。この報道の傾向が現在の成長率で続けば、2025年までに女子の報道シェアは20%に達する可能性があります

女子スポーツに関するソーシャルメディア上の会話は、2022年には18.5%に増加し、年平均2.53%のシェア増加率を記録しました。

●女子アスリートは、他のタイプのインフルエンサーと比較して格段に影響力を持っています。88%の人がプロの女性アスリートを若い女性にとって影響力のあるロールモデルとみなしています

●女子スポーツの視聴者は急増しています。2023年に開催されたFIFA女子ワールドカップは、全世界で約20億人の視聴者を集め、史上最も視聴された女子スポーツイベントとなりました。

●2023年8月30日にネブラスカ州リンカーンで開催されたバレーボールのダブルヘッダーには92,003人がスタジアムに詰めかけ、女子スポーツイベントで最大の観客を記録しました。この前の91,648人という記録は、2022年4月20日にスペインのカンプ・ノウでバルセロナの女子サッカー選手たちがUEFAチャンピオンズリーグ準決勝でヴォルフスブルクを迎えたときに樹立されました。

今や10人中7人が女子スポーツを観ています。ほぼ73%が少なくとも年に数回は女子スポーツを観ると答えており、同じ頻度で男子スポーツを見る割合(81%)と大差がなくなってきています。

女子スポーツファンの半数以上(54%)は、ここ3年以内に観始めたばかりです

給与、賞金、スポンサー契約

●1973年、ビリー・ジーン・キングが女子テニス協会を設立したとき、テニスは平等な賞金への道を切り開きました。今日、テニスの4大大会すべてにおいて賞金は平等です。

●男女代表チームの同一報酬を約束するサッカー連盟は増えており、オーストラリア、ノルウェー、ニュージーランド、ブラジルもそのリストに載っています。2022年、アメリカ女子サッカー代表チームは、その後のワールドカップを含む全試合における同一報酬レートを確立するに至った数年間にわたる法廷闘争の末、画期的な同一報酬和解を成立させました。この和解には、過去の差別に対する補償金2,200万米ドルも含まれていました。

●2023年、女子ワールドカップは1億5000万ドルの賞金を授与し、これは2019年より300パーセントの増加ですが、それでも2022年のカタールで男子が手にした4億4000万ドルの約3分の1にすぎません

ワールド・サーフ・リーグ(WSL)は2018年、2019年シーズン以降のWSLが管理するすべての大会において、男子選手と女子選手に対して同一の賞金を授与すると発表しました。

●2023年のPSA(Professional Squash Association)男子スカッシュ世界選手権では、男女それぞれに50万ドルの賞金が授与され、2023年のPSA女子世界選手権では、スポーツ史上初めて男子を上回る賞金額が設定されました。

●Sports Unitedの最新データによると、女子プロスポーツのスポンサー契約数は前年比で22%以上増加しています。

●2024年には、女子ナショナル・バスケットボール・アソシエーション(WNBA)のスーパースター、ケイトリン・クラークが、スポーツ用品大手ウイルソンのブランド・アンバサダーとして、前例のないスポンサー契約を結びました。クラークは2024年4月にウイルソンと8年契約を結び、さらにナイキとも2800万ドルで契約を結び、彼女のシグネチャーシューズも提供される予定です

●多くの急速な進歩にもかかわらず、大きな格差が残っています。女子アスリートたちは、少ないプロの機会、大きな賃金格差、少ないスポンサー、少ない放送時間、不平等なプレー条件と闘い続けています。

●WNBAのドラフト1位、ケイトリン・クラークの初年度の年俸は7万6000ドルNBAのドラフト1位は1000万ドルです

●フォーブス誌が発表した2024年の世界で最も年俸の高いアスリート100人の中に女性はいませんでした

●Sporting Intelligenceが2017年に実施した世界的なスポーツ選手の給与調査によると、エリートアスリートのうち、女性の平均給与は男性のたった1%でした

スポーツにおける女性と少女に対する暴力

●女性と少女は、スポーツの場面や環境、そして選手、コーチ、記者、セラピスト、審判、ファンなどさまざまな役割において暴力を経験しています。

●このような事例を追跡調査する取り組みは世界的に増加していますが、スポーツにおける暴力の大きさと広がりに関するデータには欠落があります。とはいえ、入手可能な調査、事例証拠、実際の体験談は、あらゆる文化圏の女性と少女が、ハラスメントから性的暴行に至るまで、スポーツの場で暴力に直面していることを浮き彫りにしています。

●2023年FIFA女子ワールドカップで優勝したスペイン女子代表がトロフィーを手にしたとき、ある選手がスペインサッカー連盟会長から望まぬキスをされ、その会長はFIFAから3年間のサッカー関連活動禁止処分を受けました。これを機に、女子チームを支援する運動が起こり、女子スポーツ界にこのような虐待(abuse)が蔓延していることへの世界的な認識が高まりました。加害者に対する裁判は、現在もスペインで係争中です。それ以前に選手たちが何年も訴えてきた虐待は、世界中の人々の目に触れるようになるまで真剣に取り上げられることはありませんでした。

女性アスリートを性的・心理的虐待から守るために設けられたセーフガードは、資金不足で、しばしば効果がないか、完全に無視されています。他の十分な資金が投入されたスポーツ・インテグリティ(スポーツの高潔性・健全性)への対策は、ドーピングやマッチフィクシングの抑制に重点を置く傾向があります。

プロの女子アスリートの21%近くが、子どもの頃にスポーツで性的虐待を受けた経験があり、これは男性アスリートの11%のほぼ2倍です。

●最近のスキャンダルでは、体操、フィギュアスケート、水泳、シンクロナイズドスイミング、サッカー/フットボール、バスケットボール、水球、テコンドーなどのケースが広く知られています。

●スポーツ組織はその評判を守るためにハラスメントや虐待を隠蔽しようとすることがこれまであまりにも多くありました。米国体操協会のケースもそうでした。サバイバーたちの勇気により、チームドクターによる数十年にわたる虐待の末、複数の終身刑の有罪判決を勝ち取ることに成功しました。 

オンライン・ハラスメントと虐待

●女性アスリートが成功を収めると、ネット上や主流メディアにおいてさえも、虐待という有害な反動に直面するのが常です。これは、彼女たちがトレーニングや競技中に直面するハラスメントや虐待に加えてのことです。そして、彼女たちがあえて声を上げると、深刻な報復に直面することがあまりにもよく起こります。

●ワールドアスレティックス(世界陸上競技連盟)の調査によると、東京オリンピック開催までと開催中のオンライン上の虐待の85%が女性に向けられたものであり、そのうちの63%がたった2人のアスリート(いずれも黒人で女性)に向けられたものでした

●また、2022年世界陸上オレゴン大会期間中に実施されたツイッターとインスタグラムの追跡調査では、虐待的投稿の40%が性別に帰する、或いは、性的な虐待であり、圧倒的に女性に向けられたものでした

BBCは、女子エリートアスリートを対象に3回目の調査を実施、そのうち30%が深刻なオンライン上の虐待を経験していました。BBCは、女子スポーツの放映時間を増やす取り組みの強化に加えて、現在、自社のソーシャルメディア・チャンネルでこの問題に対処するための措置を講じています。

●東京オリンピックで記録された虐待に対して、国際オリンピック委員会は、2024年パリオリンピック・パラリンピック競技大会において、公開ソーシャルメディア・チャンネルを持つすべての競技選手が利用できるサイバー虐待保護サービスを実施しています

スポーツ界でリーダー的役割を担う女性

●スポーツ界における女性のリーダーシップは、ジェンダー平等の目標に関連した投資やスポーツ政策の改善を推進する上で極めて重要です。過去10年間に顕著な進展が見らますが、まだ足りていません。

●国際オリンピック委員会(IOC)では、IOC委員の41%が女性で、2013年より100%増加し、年齢や地域の代表の多様性も増しています。

IOC委員会代表のジェンダー平等は2022年に達成され、2023年も維持されました。これは歴史的な高水準であり、2013年以来100%増に相当します。33のIOC委員会のうち14、つまり42.4%が女性の委員長に率いられており、IOC理事会メンバーの33%が女性です

●東京2020大会では、コーチのうち女性はわずか13%でした

●Sports Integrity Global Allianceの最新の調査(2023年)によれば、国際スポーツ連盟の幹部職のうち女性が占める割合はわずか26.9%です。同調査によると、調査対象となった31の国際スポーツ連盟のうち、女性が指揮を執っていたのはわずか3団体でした。206の国内オリンピック委員会のうち、女性が委員長を務めているのは24しかありません

●FIFAは100年以上、執行委員会に女性がいませんでした。2016年、FIFAは初の女性事務総長を任命しました。2018年、FIFAは女子サッカー部門初となる世界戦略を打ち立て、2019年、FIFAは女子サッカーに10億米ドルを投入することを約束しました

●2026年までに、FIFAの211の加盟協会(MA)はそれぞれ、少なくとも1人の女性を執行委員に迎えます。2024年5月の時点で、すでに83%のMAが少なくとも1人の女性執行委員を擁しており、2019年の64%から上昇しています。

国際サーフィン連盟(ISA)は、ジャッジ職における女性代表を増やす取り組みの先駆者です。2020年に設立された女性ジャッジプログラムを通じて、ISAはこの分野での女性の登用を推進しています。

[これらのファクトと数字は2024年7月に編集・改訂されたものです。]

Facts and figures: Women in sport (unwomen.org)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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