恐れなく立ち上がる女性たちの声:平和と安全のための私たちの目標と挑戦
2024年11月2日
国連事務次長兼UN Women事務局長のシマ・バフース氏が、女性・平和・安全保障に関する国連安全保障理事会の公開討論会で行ったブリーフィング
2024年10月24日
本日、私たちは国連デーを記念し、すべての人のための平和、人権、開発を促進するという国連の崇高な使命を再確認したいと思います。私たちは、紛争を予防し解決し、すべての女性と男性の尊厳、平等、正義を確保するために、外交、対話、交渉が引き続き必要であることを思い起こします。私は、この国連の日に、女性・平和・安全保障に関する年次公開討論会に皆様とご一緒できることを光栄に思います。
先日の国連総会のハイレベル会合が催された週に、家父長制の撤廃を訴えるイベントで演説したナイジェリアの詩人は、「権力が共有され、恐れることなく声があげられない世界で、平和とはいったい何の意味があるのでしょうか?」と問いかけました。
恐れることなく声をあげることは、私たちの目標と挑戦の両方を明確かつ端的に表しています。
私たちは、教育、未来、そして声を奪われた何百万人ものアフガニスタンの女性と少女たちの恐怖を思い起こします。
私たちは、何度も避難を余儀なくされ、爆弾、火災、病気、飢餓などによる死を待ち続けるガザの女性たちの恐怖を思い起こします。子どもたちに何を食べさせればいいのか、どうやって養っていけばいいのか、終わりの見えない容赦ない破壊の1年後、子どもたちの未来にについて何を伝えれば良いというのでしょうか。
私たちは、ガザで捕らえられた人質と、彼らの解放を待っている家族や母親たちに思いを馳せます。
私たちは、レバノンの女性や家族が自分たちの住む町で砲撃を受けている恐怖を思い起こします。
私たちは、スーダンで避難生活を送る女性たちの恐怖を思い起こします。銃を持った男たちによる性的暴力の犠牲となり、歴史が繰り返されるのを目の当たりにし、食料も水も安全な場所もないのです。
私たちは、無差別な暴力、強制退去、不安に耐え続けているハイチの女性たちの恐怖を思い起こします。
私たちは、クーデター反対の声を上げたために拘束された何千人ものミャンマーの女性たちの恐怖を思い起こします。国境を隔てた難民キャンプで、彼女たちがいかに消えゆく希望の中で、それでも一縷の望みを捨てずに待ち続けているか。7年という長い亡命生活の末に、その希望が消えてしまう人もいるのです。
私たちは、コンゴ、中東サヘル、南スーダン、シリア、ウクライナ、イエメンの姉妹たちの肩にのしかかり、心に深く巣くう恐怖を思い起こします。
現在、6億1,200万人の女性と少女が戦争から受けている恐怖は、10年前よりも50%多くなっています。
彼女らは、他の多くの人々と同様に、世界がすでに自分たちを忘れてしまったのではないか、頻度、深刻さ、緊急性がますます高まる危機に圧倒された国際社会のアジェンダから落ちてしまったのではないかと心配しています。
私たちは、その恐怖に希望をもって答えること以上に大きな責任の果たし方はないと考えます。
事務総長の報告書でお分かりのように、2023年には、紛争で死亡した女性の割合が倍増しました。紛争関連の性暴力が確認された件数は50%増加し、重大な人権侵害の影響を受けた少女の数は35%増加しました。
紛争の影響下にある女性と少女の2人に1人は、中程度から重度の食料不安に直面しています。
妊産婦死亡率全体の61%は、紛争の影響下にある35カ国に集中しています。産科病棟が爆撃され、リプロダクティブ・ヘルスケアが遮断され、性暴力が増加する中、これらの数は増え続けるでしょう。
事務総長の報告書は、このような事態がすべて、平和に向けた私たちの努力にもかかわらず、女性への配慮や女性のリーダーシップ、発言力が不十分であることを背景に起きていることを再確認させてくれます。紛争の影響を受けた国々では、意思決定や政治への女性の参加が停滞しています。
和平交渉における女性の割合は、過去10年間改善されておらず、すべてのプロセスで平均10%未満、国連が主導または支援するプロセスでは20%未満です。2023年には、ジェンダー関連の条項を含む和平合意や安保理決議が減りました。
これらすべては、軍事費が劇的に増加し、ジェンダー平等への支出が減少し、紛争の影響を受けた女性組織への資金援助が3年連続で減少し、人道支援の中のジェンダーに基づく暴力防止と対応に必要な総資金のわずか23%しか満たされなかったからです。
ジェンダー平等や女性のエンパワーメントという考え方そのものに対する反発は現実のものであり、あまりにも多くの場所で目にします。
これは、紛争の影響を受けた国々でも同様で、そこではさらに致命的な結果をもたらします。
女性の移動する権利、意見を聞いてもらう権利、生計を立てる権利、虐待を告発する権利、自分自身と自分の身体のために選択をする権利は、生と死の分かれ目となりえます。政治的利益のために、紛争の手段として女性差別を利用することは、私たちが何世代にもわたってその代償を支払うことにつながります。
その代償とは、より多くの紛争、より長い紛争、より壊滅的な紛争です。私たちは国際社会として、これを防ぐために協力することができますし、また、そうしなければなりません。
だからこそ、世界中で出会う女性たちの、多くの場合信じられないような、時には理不尽でさえある勇敢さに匹敵する勇気を持つことが、私たちに求められているのです。
彼女らは、時には私たちの手に負えないと思われることもやってのけます。危機の中で人道的アクセスの合意を仲介する、部族間の紛争を終結させる、地域の若者を武装解除し、脱過激化する。そして彼女らは、私たちが資金を提供する余裕がないため、ふさわしい資金や支援を得られないまま、このような活動に従事しているのです。
シリアでは、専業主婦であった女性たちが、親族の男性の方が逮捕されたり殺されたりする危険性が彼女たちより高かったため、いざという時には、いくつかの地区で包囲を終わらせるために決定的な役割を果たすべく立ち上がったこともあります。
アフガニスタンでは、女性が自宅に学校を開設することで、活動を強化しています。
ウクライナでは、女性が基本的なインフラが崩壊した地域での人道支援を調整し、必要とする民間人の安全な避難を支援しています。
コンゴ民主共和国では、女性の目撃者や生存者の勇気ある努力により、強制妊娠の犯罪が世界で初めて国内裁判所で成功裏に裁かました。
その結果、2023年に元民兵組織のリーダーが人道に対する罪で歴史的な有罪判決を受け、終身刑を言い渡されました。
私たちが祝うすべての勝利は、いつもその根底に、立ち上がる現地の女性がいるのです。
女性たちは、会議に招かれながらも実際の意思決定では端っこに招かれることや、何度繰り返しても成果の出ない協議、資金の裏付けがない戦略に不満を感じています。女性・平和・安全保障のアジェンダが実施され、資金が提供されることを望んでいるのです。
彼女たちは私たちに、来年の 国連安全保障理事会決議第1325号25周年を記念して行動を起こすよう呼びかけています。女性の権利への重大な侵害に対する説明責任を追求すること、差別的な法律を撤廃すること、和平交渉における女性のためであれ、ジェンダー平等のための資金提供であれ、紛争の最前線にいる女性組織のためであれ、目標と期限を定めた政策公約を行うことによって。
事務総長の報告書は、これらの最小目標と重要な勧告を豊富に含んでいます。
今月初め、アドボカシー活動と加盟国が力を合わせた結果として、欧州司法裁判所(ECJ)は、アフガニスタン女性にEUへの亡命を認めるには、アフガニスタンにおけるジェンダー迫害の記録があれば、ジェンダーと国籍だけで条件は十分であるとの判決を下しました。
これらは、最終的に炎となることを願う進歩の火種です。
ナミビアが安全保障理事会決議第1325号を本会議場で提出し、全会一致で採択されてから、来年10月で25年になります。ただ、この5年間はあまり進展が見られず、むしろアジェンダは後退しているのです。
だから、もし私たちの記念式典を真の価値を持つものにするには、これまでとは違う、より良いものを作ろうという決意の上に成り立つものでなければなりません。
私たちは、その土台となる強固な基盤を手に入れています。女性・平和・安全保障に関する国内行動計画を採択した加盟国は、2010年の19カ国から110カ国に増えたのです。
女性・平和・安全保障に対する私たちのコミットメントは、最近のすべての多国間協定によって強化され、繰り返し表明されてきました。
女性の完全かつ平等で有意義な参加を支援することは、安全保障理事会決議で最もよく使われるフレーズのひとつとなっています。残されているのは、私たちの資金提供の決定を通じて、これらを実際に実現することです。
そうすることで、女性平和構築者に戦うチャンスを与えることができます。平和をより可能にし、永続させ、新たな紛争を防ぎ、すでに起きている紛争からの回復を早めることができるのです。
これが、2030アジェンダとSDG5の実現に向けた動きを加速させる方法です。これが、来年30歳になる北京宣言と行動綱領を再確認する方法なのです。
こうして私たちは約束を現実のものとし、世界の女性と少女が望む方法で安保理決議第1325号の記念日を祝いましょう。これこそ世界が私たちを必要としている記念の仕方です。UN Womenは、私たちが共有する現実を実現するために、皆さんとともに立ち上がります。
よろしくお願いいたします。
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会