COP29の決定は気候変動対策におけるジェンダー平等に成果をもたらしたが、なすべきことはまだある
2024年12月2日
2024年11月26日付
第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)は11月24日、気候変動対策に関して、2035年までに気候関連資金を年間3,000億米ドルにするという新たな目標を含むいくつかの重要な世界的合意をもって閉幕しました。
会議を通して、ジェンダー平等を支持する人々は、持続可能な世界経済への、ジェンダーに対応した移行を求め、すべての気候変動対策においてジェンダー平等とフェミニズムの原則の統合を深めるよう声を上げました。
気候変動資金の重要な受益者グループとして女性を認識し、低排出経済への公正な移行に不可欠なインフォーマル経済における女性を認識するという点では、一定の進展が見られました。締約国は、ジェンダーに対応した気候政策と行動に対する決意を新たにしましたが、多くの女性が直面する具体的な状況や複雑な差別に完全に対処するのに必要な資金と範囲は明らかにされませんでした。
全体として、COP29での決定はジェンダーに対応した気候変動対策のための前進を示すものではありますが、同時に、いくつか重大な機会を逃したことも映し出しています。
【前進した点】
COP29における交渉の前向きな成果は:
・「強化されたジェンダーに関するリマ作業計画(eLWPG)」の延長:本計画の10年間の延長は、気候変動対策へのジェンダー平等の課題の統合をさらに深める重要な機会を提供するものです。この延長は、「ジェンダーと気候変動に関する決定書(Gender and Climate Change Decision)」によって義務付けられたものであり、ジェンダー平等を推進し、締約国の努力および気候変動条約の下でのプロセスにジェンダーへの配慮を組み込むでしょう。また、このことは、2025年開始が予想される気候変動に関する新しい政策や計画を立案・実施する際、各国政府に説明責任を課す一助となるでしょう。また、2025年に新しいジェンダー行動計画が求められたことは、締約国が野心を高め、明確なターゲットと資金調達目標を提示する機会となります。
・新たな気候変動資金目標におけるジェンダー問題の認識:「新規合同数値目標(New Collective Quantified Goal)」に関する決定は、気候変動資金が女性やその他の周縁化されたグループを参画させ、彼女たちに利益をもたらすとともに、人権を尊重し、保護し、促進し、達成しなければならないことを明記しています。
・女性の参加の増加:暫定データによると、COP28の参加者の34%が女性であったのに対し、COP29では35%でした。
【逃した機会】
これらの合意の一部においてジェンダー平等が認識されたことは歓迎すべきことですが、いくつかの重要な分野では、ジェンダー平等に取り組む人々が期待していたような変革には至りませんでした:
・ジェンダーに対応した気候変動資金に関する明確な目標の欠如: 気候変動資金の受益者グループの中に女性を特定する一方で、3,000億米ドルに達するという資金調達目標は、その実行においてジェンダーに対応した資金調達に対する明確なコミットメントを欠いており、測定可能な目標や実施メカニズムも欠いています。気候変動資金へのジェンダー対応アプローチに対する明確な説明責任がなければ、既存の不平等を永続させるリスクは高いままです。
・リーダーシップの大半を依然として男性が占めていること: COP29は代表団のジェンダー別内訳に関する速報値データから、国レベルおよび国際レベルの気候ガバナンス機構におけるジェンダー平等がまだ遠い目標であることを示しました。
・差別の交差性が認識されなかったこと: ジェンダー平等の擁護者たちは、締約国が「あらゆる多様性の中で」女性を認識し、差別はさまざまな形で交差しながら女性に影響を与えるものであると認識することを期待していました。初期の交渉草案にはそのような文言が含まれていましたが、採択された文書には含まれませんでした。こうした差別の交差性の認識の欠如は、気候変動対策において、女性と少女に対する差別の多様で交差する形態に対処する能力を制限することになります。
・不十分なジェンダー別データ: 2023年のCOP28における第1回グローバル・ストックテイク(GST)以降、ジェンダー別のデータの収集・分析・利用を呼びかけているにもかかわらず、そのために必要なメカニズムが明確でなく、進捗状況を監視する能力も不十分なため、気候変動政策が女性と少女に与える影響を追跡する取り組みが損なわれています。
・「UAE公正な移行のための作業プログラム」の不採用: 草案は、気候変動による資源不足のため、例えば干ばつや洪水などの災害時には水汲みが困難になるなど、有給・無給を問わずケア労働が増加していることを認識するものでした。ケアに関する責任は女性と少女が担うことが多いため、この認識は、女性の懸念を気候政策に組み込むための重要な一歩となります。しかし、交渉締約国のコンセンサスが得られず、この文書は採択されませんでした。
【進むべき道】
各国政府、市民社会組織、そして多国間機関がバクーを後にしますが、私たちは COP29がジェンダーに対応した気候変動対策のために与えてくれた機会を生かし続けなければなりません。私たちは、気候変動はジェンダーに中立的なものではなく、その解決策もそうではなくなってしまうということを認識しなければなりません。
持続可能な未来には、女性と少女がリーダー、意思決定者、変革の担い手として全面的に参画することが求められます。UN Women は、ブラジルのベレンで開催される COP30 において強力で前向きな 気候変動枠組条約ジェンダー行動計画が採択されるよう、今後数カ月間にわたって締約国と協力し、支援し続けます。
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