事実と数字: 女性に対する暴力をなくすために
2024年12月17日
2024年11月25日付
女性と少女に対する暴力に関する入手可能なデータは、近年かなり増加してきており、親密なパートナーによる暴力の蔓延に関しては、現在少なくとも161か国の有効なデータがあります。UN Womenの調査とデータのぺージをご覧いただき、女性と少女に対する暴力の抑止と対応に取り組む上でデータがいかに重要かということを理解していただきたいと思います。
・女性と少女に対する暴力の蔓延
・フェミサイド/フェミニサイド
・女性と少女に対する暴力のリスク要因
・女性と少女に対する暴力を悪化させる気候変動・健康・人道危機
・女性と少女に対する性的暴力
・女性の人身取引と搾取
・少女に対する暴力
・FGM(女性性器切除)
・テクノロジーを利用した女性と少女に対する暴力
・公の場で働く女性に対する暴力
・女性に対する暴力に関する報告
・女性と少女に対する暴力に関する法律
・女性と少女に対する暴力をなくすための資金
・女性と少女の暴力による経済的損失
女性と少女に対する暴力の蔓延
●女性に対する暴力の世界的規模: 推定で7億3,600万人、すなわちほぼ3人に1人の女性が親密なパートナーからの身体的または性的な暴力、パートナーでない人からの性的暴力、またはその両方を人生で少なくとも一度受けています(15歳以上の女性の30%)。この数字にはセクシュアルハラスメントは含まれていません。暴力を経験した女性は、鬱、不安障害、望まない妊娠、性感染症、HIVなどを経験する可能性が高く、長く苦しみ続けることになります。
●親密なパートナーによる暴力: 女性に対する暴力のほとんどは、現在もしくは元の夫や親密なパートナーによるものです。6億4,000万人を超える15歳以上の女性(26%)が親密なパートナーから暴力を受けています。
フェミサイド/フェミニサイド
●2023年、世界全体で約51,100人の女性と少女が、親密なパートナーや他の家族によって殺害されました。これは、平均して1日140人の女性や少女が家族の誰かに殺害されていることになります。
● 女性の殺害のうち60%が親密なパートナーや他の家族によるものであるのに対し、男性がプライベートな場所で殺害されるのはわずか12%です。
10分に1人女性が殺害されています
・#NoExcuse. 女性に対する暴力をなくすために団結しましょう
・16日間の活動キャンペーンにご参加ください
女性と少女に対する暴力のリスク要因
複数の形態の差別に苦しむ女性は暴力を受けるリスクが高く、被害に遭いやすくなっています。
●思春期の少女に対する暴力: 少女は成人女性よりも親密なパートナーによる暴力を受けるリスクがあります。19歳になるまでに、交際経験のあるほぼ4人に1人の思春期の少女(24%)がパートナーから身体的、性的、心理的虐待を受けています。
●カリブ諸国におけるパートナーによる暴力とジェンダー不平等: グレナダ、ガイアナ、ジャマイカ、スリナム、トリニダード・トバゴの CARICOM(カリブ共同体)加盟の5か国における女性の健康調査の地域分析(2016年から2019年)によると、男性優位やジェンダー不平等を強めるような信念を持った男性と交際していたことのある15歳から64歳の女性は、ドメスティックバイオレンスをこれまでずっと、あるいは現在受けている可能性が高いことがわかりました。女性の身体、自律、他者との接触を支配しようとする行動も、親密なパートナーによる暴力の経験の増加と強い相関関係があります。
●障がいのある女性は、障がいのない女性よりも親密なパートナーによるあらゆる形態の暴力を受ける可能性が高いです。障がいと暴力リスクの増加に強い関連があることを裏付けた最近の調査もあります。欧州連合で実施された調査では、障がいのある女性は暴力を経験するリスクが高く、さらにこれに低所得という要因が加わると、リスクがより高まるということが明らかになりました。
女性と少女に対する暴力を悪化させる気候、健康、人道の危機
経済的危機、紛争、気候変動などによる複合的な危機は、ジェンダーに基づく暴力を激化させ、周縁化された女性たちは不均衡で複数の形態の交差した差別に直面しています。
●気候変動と環境悪化によって、避難、資源不足、食料不安、サバイバーに対するサービス中断などが生じ、女性と少女に対する暴力のリスクが高まります。
○ 気候変動によって避難した人の80%は女性であると推定されています。
○ 2005年のハリケーン・カトリーナの後、避難した女性でレイプの被害に遭った人の割合は、同年ミシシッピ州では基準値の6倍に上りました。
○ カンタベリー地震後、ニュージーランド警察はドメスティックバイオレンスが53%増加したと報告しました。
○ エチオピアでは、長期にわたる干ばつの影響を切り抜けるために、家畜と引き換えに結婚のために売られる少女が増加しました。
○ ネパールでは、1990年には年間推定3,000人から5,000人だった人身取引が、2015年の地震以降は年間12,000人から20,000人にまで増加しました。
●人道状況は女性の安全に深刻な影響を与えており、ジェンダーに基づく暴力(GBV)を受ける女性の割合は世界全体では35%であるのに対して、人道状況が厳しい地域においては70%です。
○ 児童婚の割合は、紛争地域では 4ポイント高くなっています。
○ アフガニスタンでは、2024年7月までに、1人で外出するのは「まったく」安全ではないと答えた女性は64%であるのに対して、男性は2%でした。調査を受けた女性の8%が、過去3年間に自殺を図った女性や少女を少なくとも1人は知っていると答えました。
○ ハイチでは、キャンプにいる女性の8%が生活のために少なくとも一度は性労働や売春に頼ったことがあると答え、またそうしたことがある人を少なくとも1人は知っていると答えた女性は20.6%でした。
●避難とジェンダーに基づく暴力: コロンビアとリベリアで避難を余儀なくされた女性は、避難をしていない女性に比べ、過去1年間で親密なパートナーによる暴力を受けるリスクがそれぞれ40%と55%高くなっていました。
女性と少女に対する性的暴力
●パートナー以外からの性的暴力: 世界全体では女性の6%が夫やパートナー以外から性的な暴力を受けたことがあると答えています。 しかし、パートナー以外からの性的暴力の実際の発生率は、この形態の暴力を取り巻く特有の偏見を考慮するともっと高い可能性があります。
●性的暴力の危機にある思春期の少女: 世界全体で約1,500万人の15歳から19歳の思春期の少女が強制性交を経験しています。大半の国において、現在または元の夫、パートナー、ボーイフレンドによる強制的な性交、またはその他の性行為といった性暴力の危機に最もさらされているのは思春期の少女です。30か国のデータによると、専門的な援助を求めたのはそのうち1%にすぎませんでした。
女性の人身取引と搾取
●2020年、世界中で摘発された人身取引の被害者10人につき、4人が成人女性、2人が少女でした。
●性的搾取を目的とした人身取引の被害者の91%が女性です。裁判事件の分析によると、女性の被害者が人身取引業者から身体的暴力、過激な暴力を受ける割合は男性の3倍です。
少女に対する暴力
●世界的な児童婚率の減少:世界全体で18歳未満で結婚した20歳から24歳の女性の割合は、2010年にはほぼ4人に1人でしたが、2022年には5人に1人(19%)に減っています。 しかし、2030年までに児童婚をなくすには、現在の20倍のペースで進展させる必要があります。もし何の進展もなければ、2030年には900万人の少女が児童婚をすることになり、最も貧しく周縁化された地域の少女が特にその犠牲になります。
●学校関連のジェンダーに基づく暴力: 世界全体で11歳から15歳の3人に1人の生徒が、過去1か月の間に少なくとも1回学校で仲間からいじめを受けており、女子も男子も同様にいじめを経験しています。男子は女子と比較して身体的ないじめを経験する可能性が高いのに対し、女子は心理的ないじめを経験する可能性が高く、女子は、男子よりも頻繁に顔や身体の見た目によってからかわれると訴えています。
女性器切除
女性器切除(FGM)は、世界中の何百万人もの女性と少女を苦しめ続けている深く根付いた慣習です。撤廃をめざす世界的な取り組みにもかかわらず、特にアフリカや中東でFGMは続き、深刻な健康リスクをもたらし、基本的な人権を侵し、ジェンダー不平等を固定化させています。
●FGMを経験した少女と女性は2億3,000万人を超え、8年前のデータと比べると15%、すなわち3,000万人増加しています。
●サハラ砂漠以南のアフリカで、女性と少女の4人に1人がFGMを経験しています。しかし、状況は国によって大きく異なります。FGMがほぼ普遍的に行われている国がまだあります。カメルーンやウガンダのように全体の1%に満たない国がある一方で、15歳から49歳の少女と女性の10人のうち少なくとも9人にFGMが行われている国があります。
テクノロジーを利用した女性と少女に対する暴力
女性と少女に対するテクノロジーを利用した暴力について共通の定義がないので、比較可能な世界的データを集めることは困難です。しかし、各国や地域の調査によると、オンラインでのハラスメントや虐待の割合が驚くべき高さであることが明らかになっています。
●欧州連合の女性の10人に1人が、15歳以降にサイバーハラスメントを経験したと報告しています。これには、望まない、あるいは不快になる露骨に性的な内容のメールやSMSメッセージを受け取ったことや、ソーシャルネットワーキングサイト上で不快かつ不適切な誘いを受けたことが含まれます。
●アラブ諸国では、ある地域調査によって、過去1年間にこの地域の女性インターネット利用者の60%がオンライン上の暴力にさらされた経験があることが明らかになりました。
●西バルカン諸国と東欧諸国において、女性の半数以上がオンライン上で一生のうちに何らかのテクノロジーを利用した暴力を経験しています。
●ウガンダでは2021年、約半数の女性(49%)がオンラインハラスメントに巻き込まれたことがあると答えました。
●韓国国家人権委員会の2016年の調査によると、85%の女性がオンライン上でヘイトスピーチを経験していました。
公の場で働く女性に対する暴力
議員やジャーナリストをはじめとする公の場で働く女性は、しばしばジェンダーに結びついた激しい心理的暴力、ハラスメント、脅迫に直面しています。こうした形態の暴力は、女性の身の安全を脅かすだけでなく、ジェンダー平等や民主政治への参加を妨げます。
●女性議員に対する暴力:
○ 5つの地域全体で、女性議員の82%が任期中に何らかの心理的暴力を受けたと答えました。これには、性差別的で屈辱的な性的性質のある発言、ジェスチャー、画像や脅し、集団によるいじめが含まれます。
○ソーシャルメディアはこの種の虐待が行われる主たる場になっており、女性議員の半数近く(44%)が本人や家族に対する殺害、レイプ、暴行、誘拐の脅迫を受けたと答えています。
○女性議員の65%が、主に男性議員から性差別的な発言を受けたと報告しています。
●女性ジャーナリストに対する暴力:
○ 世界規模の調査によって、女性ジャーナリストの73%がオンライン上で暴力を受けたことがあることが明らかになっています。
○ 経験したオンライン上の暴力に関連して、20%がオフラインで攻撃されたり虐待を受けたりしたと言いました。
○ 女性ジャーナリストへの攻撃増加に最も関連している報道テーマは、ジェンダー(49%)、次いで政治と選挙(44%)、人権と社会政策(31%)でした。
女性に対する暴力に関する通報
●暴力を受けた女性のうち、何らかの助けを求めるのは40%以下です。この問題に関するデータがある大多数の国において、助けを求める女性は家族や友人を頼り、警察や保健所などの公的機関を頼る人は少数です。
●助けを求める人のうち、警察に訴えるのは10%以下です。
女性と少女に対する暴力に関する法律
●限られた法的保護: 2022年、女性の基本的人権を保障する強力な法的保護のある国で暮らしているのは、全女性と少女のわずか14%の約5億5,700万人にすぎませんでした。
●ドメスティックバイオレンスの法制化の影響:
○ドメスティックバイオレンスに関して法制化されている国では、親密なパートナーによる暴力の発生率が低くなっており、法制化されていない国では16.1%なのに対し、9.5%です。
○151か国に職場でのセクシュアルハラスメントに関する法律がありますが、公共の場におけるセクシュアルハラスメントを禁じる法律を制定しているのは39か国だけです。
○ドメスティックバイオレンス法がある165か国のうち、ドメスティックバイオレンスに対処する包括的な法律があるのは104か国にとどまります。
●2023年の新たな法制化:
○ 2023年、レソト、トーゴ 、ウズベキスタン がさまざまな形態のドメスティックバイオレンスから女性を守る法律を制定しました。
○ アルメニア、赤道ギニア、ヨルダン、モルドバ 、スリナム が職場でのセクシュアルハラスメントに関する法律を制定しました。
●法制化における格差:
○ 同意の原則に基づいたレイプに関する法律がない国が60%を超えています。
○ サイバーハラスメントに対して法律で守られている女性は世界の半数に届いていません。
○ 世界全体では、 139か国に児童婚を禁ずる適切な法律がありません。
女性と少女に対する暴力をなくすための資金
●ジェンダー平等への予算配分の追跡: 2023年現在、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための予算の配分を追跡して実施する包括的なシステムがあるのは27か国だけです。
●女性に対する暴力をなくすための資金援助の減少:
○ 過去5年、政府開発援助(ODA)の金額が増加しているにもかかわらず、女性に対する暴力をなくすための資金援助は2018~2019年から2020~2021年にかけて13%減少しています 。
○ ジェンダー関連のODAの99%が現地の女性権利団体やフェミニスト運動に届いていません。
○女性と少女に対する暴力をなくすためのOECD加盟国の拠出金のうち、市民社会組織に割り当てられているのはわずか5%程度です。
女性と少女に対する暴力による経済的損失
女性に対する暴力は、国家、被害者/経験者、地域社会に大きな費用負担をもたらします。費用には直接的なものと間接的なもの、有形のものと無形のものがあります。例えば、シェルターで働く人の給料は直接的で有形の費用です。こうした費用は、被害者/経験者本人、加害者、政府、社会全体を含むすべての人が負担します。以下に、世界各地でのジェンダーに基づく暴力の経済的損失の例をいくつか挙げます。
●ベトナムでは、暴力を原因とする自己負担額と逸失利益を合わせた費用は、GDPの約1.41%に相当します。暴力を経験した女性の収入は経験したことがない女性より35%低く、国家経済へのもうひとつの大きな打撃であることは明らかです。
●エジプトでは、夫婦間の暴力が原因で推定で50万日の労働日数が毎年失われ、暴力被害者の4分の1(60万人)にサービスを提供するために保険部門は1,400万米ドル以上を負担しています。
●モロッコでは、女性に対する身体的または性的暴力による費用は、年間で総額28億5,000万ディルハム(約3億800万米ドル)と見積もられています。
●欧州連合全体では、ジェンダーに基づく暴力による費用は年間3,660億ユーロと見積もられており、女性に対する暴力が2,890億ユーロで、その79%を占めています。
(翻訳者:早乙女由紀)
原文
Facts and figures: Ending violence against women | UN Women – Headquarters
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会