移住する女性たち: 移住とジェンダーに関するFAQ
2025年1月10日
2024年12月12日付
ジェンダーが移住者に与える影響に関するUN WomenのFAQです。移住した女性と少女が直面する固有の課題、また、情報やサービスへのアクセスの制約から人身取引、搾取、暴力などのリスクにいたるまで、男性が経験するものとどのように異なるかをFAQ形式で説明します。
移民、難民、亡命希望者の違いは何ですか
移民とは、通常居住している場所から移住した人、または移住する過程にある人のことです。多くの場合、仕事の機会や教育、離れていた家族と一緒に住むことによって生活を向上させることを目的としています。法律上の定義はありませんが、移民という語は、通常居住している場所から移住することを自ら選択した人を指します。一方、難民とは、迫害、暴力、紛争から逃れ、安全に母国に戻ることができない人を指します。難民は、難民の地位に関する1951年の条約に基づき、国際法によって保護されています。また、亡命希望者は、母国を離れ、迫害や深刻な人権侵害から逃れて他国に保護を求めている人ですが、まだ正式に難民として認定されておらず、亡命申請の結果が出るのを待っている状態にあります。亡命希望者が全員正式に難民として認定されるわけではありませんが、難民は元々は亡命希望者です。
なぜ女性や少女は母国を離れることを選択するのでしょうか
女性や少女が移住する理由はさまざまで、例えば経済的な機会、教育、離れた家族との生活のため、あるいはジェンダーに基づく暴力や女性器切除や児童婚などの有害な慣習から逃れるためなどがあります。適切な仕事やリソース、法的保護へのアクセスが限られていることなど、差別やジェンダー不平等が、女性の移住の決断に影響を与えることもよくあります。紛争や気候危機は女性に不均衡な影響を及ぼすため、多くの女性が安全と安心を求めて移住をしています。
ジェンダーは移住者にどのような影響を与えますか
ジェンダーは移住のあらゆる段階に影響を与えます。出身国、通過国、目的国において法律や政策が既存のジェンダー格差を助長していることが多いため、多くの女性や少女が、移住のあらゆる段階においてジェンダーに基づく差別を受けることになります。移住の動機、情報へのアクセス、移住先までの旅程(特に陸路や海路で危険な非正規ルートをたどる女性の場合)、そして新しいコミュニティへの統合など、ジェンダーは、移住のあらゆる側面に影響を与えます。また、移民女性が従事する職種や直面する課題にも、ジェンダーは影響を及ぼします。
差別は、人種、民族、国籍、言語、宗教など、さまざまな要因によって生じることがあります。これらの側面がジェンダーと交差すると、差別の影響が、より顕著かつ複雑なものになります。こうした重層的な不平等に効果的に対処するためには、移民女性が直面するジェンダー固有のニーズ、課題、リスクに対応する法律や政策を実施することが不可欠です。こうした法律や政策は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進することによってすべての個人のニーズを認識し、それに応えるものでなければなりません。
女性と少女は移住の際にどのような問題に直面し、それは男性が直面する問題とどう違うのでしょうか?
国境を超えて移住する人のほぼ半数が女性と少女です。また女性は、本国に仕送りをする移民労働者(送金者)の約半数を占めています。移住する理由は他にもありますが、特に、生活水準や経済的な見通しを改善するために移住する女性もいます。多くの場合、移住はよりよい生活の機会をもたらすため、女性の自律、主体性、自立が高まります。ただ同時に、女性や少女を搾取、人身取引、強制労働、ジェンダーに基づく暴力などの深刻なリスクにさらす可能性もあります。こうしたリスクは、パスポートやビザなどの正式な書類を持たずに移動する移民の女性や少女、また女性を搾取や虐待の対象にする人身売買業者に頼り、危険なルートを通らざるを得ない女性や少女にとっては特に顕著です。
雇用の機会に関しては、労働市場や社会における不平等により、多くの移民女性にとっては情報、仕事、リソース、意思決定権へのアクセスが男性と比較して限られています。世界中で数百万人の女性や少女が、教育や生涯学習の機会を得るときに大きな障壁に直面しています。こうした障壁により、女性には、国内外の多くの雇用で必要とされるスキルや知識を習得する選択肢が制限されています。これは、最も貧しく、社会から疎外された女性や少女たちに特に該当し、彼女たちは、安全な正規の移住に関して信頼できる情報を入手できないことがよくあります。
移民女性と少女にとってのジェンダーに基づく暴力のリスクとは何ですか
世界の女性の3人に1人が、生涯に一度は親密なパートナーからの性的暴力や暴力を経験しています。移民女性と少女にとって、移住する過程におけるジェンダーに基づく暴力のリスクは驚くほど高いにもかかわらず、この問題に関するデータは十分ではありません。特に低技能部門で働く女性移民労働者が直面する搾取、虐待、暴力に関するデータや情報は驚くほど不足しています。さらに、多くの移民女性、特に正式な書類を保持していない、あるいは正規の状況ではない女性は、逮捕や強制送還を恐れて搾取や虐待を当局に報告することはありません。
移住ルートによっては、常に暴力の脅威があり、多くの女性が移住の過程で繰り返し暴力に遭遇しています。多くの場合、人身取引業者、密輸業者、犯罪組織、腐敗した役人、さらには他の移民からも暴力を受けています。移民女性が遭遇する暴力は、安全な移住ルートの欠如、複数の形態の差別、制度的不平等に根ざしています。こうしたリスクは、情報やサービスへの不十分なアクセスや言葉の壁によってさらに悪化します。貧困の増大とまともな仕事に就けない状況から、一部の移民女性が危険な経済的機会を受け入れる結果、さらに暴力、虐待、搾取にさらされやすくなっています。
移民女性は、移住先の国にどのような貢献をしていますか
人種差別やその他の差別を受ける割合が高いなど、移民女性は根深い課題に直面しているにもかかわらず、移住のあらゆる段階において、また移住先の国において多大な貢献をしています。移民女性は労働力不足を補い、文化の多様性を高め、社会の結束を促進しています。移民女性が起業することで地域経済が活性化し、また、教育や地域活動に参加することで市民活動が強化されます。移民女性が文化の架け橋となり、多様化が進む社会において相互理解と寛容を促進することがよくあります。医療や介護の分野では、世界の多くの国々で移民女性が高齢化や労働力不足に対処する上で重要な役割を果たしています。
移民女性はどのような職種に就いていますか
移民女性は移民男性と同じ職種に就くことも可能ですが、根強く残るジェンダー不平等や差別、労働市場の分離により、伝統的なジェンダーの役割に沿ったインフォーマルで不安定な職種に就くことが多くなっています。さらに、移民女性が保有する資格が認められないために、海外での機会が一層制限されることもあります。女性は、世界で1億6,900万人いる移民労働者の41%を占めていると推定されています。移民女性の約13%が家事関連の仕事に従事しており、驚くことに、そのうちの81%がインフォーマルな雇用形態で、社会保障や労働者保護の対象になっていません。多くの移民女性は、家事やケアなどのインフォーマル経済に身を置くことになり、労働者保護は最小限か皆無であるため、暴力や差別、労働搾取のリスクが高まります。
移住は女性のサービスへのアクセスにどのような影響を与えますか
法的な障害、言語の壁、差別、経済的な制約によって、移民女性が医療、住宅、教育などの基本的なサービスを利用するのがしばしば妨げられます。家事労働に従事する移民女性の場合、孤立やインフォーマルな雇用形態により、これらのサービスへのアクセスがさらに妨げられます。家族計画、妊婦健診、性教育などの性と生殖に関する保健サービスは、移民の女性や少女にとって基本的な権利ですが、法的、社会的な障壁によって、その利用が制限されることが多く、その結果、命にかかわる合併症や死につながることもあります。トランスジェンダーの移民、多様なジェンダーの移民、正式な書類を保持していない移民、そして移民として正式な認定を受けていない移民は、さらに大きな困難に直面しており、差別、拘束、強制送還への恐れから、支援を求めることをためらうことがよくあります。
移住政策が与える影響は、男性と女性でどのように異なりますか
移住政策は、女性が経験する固有のニーズや課題、そして脆弱な状況を考慮しないことが多く、それがジェンダー不平等を助長しています。ジェンダーに基づく差別によって誰が、どこへ、どのように移住するかが決まるため、多くの女性にとって、安全で正規の移住の選択肢は依然として手が届かないところにあります。その結果、多くの女性が安全でない非正規の移住ルートに頼らざるを得なくなり、人身取引、暴力、搾取のリスクが高まります。移民女性の経験に関するジェンダーデータが不足していることによって、これらの問題が悪化し、政策立案において女性のニーズが見落とされています。『安全で秩序ある正規の移住のためのグローバルコンパクト』で概説されているようなジェンダーに配慮した移住政策は、安全で正規の経路、法的保護、参加型の意思決定を通じた女性のエンパワーメントに重点を置いています。こうした政策は、制度的な障壁に対処することで、ジェンダー平等を促進し、女性の自律と機会を向上させます。
移民女性の保護を改善するためにできることは何ですか
移住政策は、女性が不平等にケア労働の責任を負っているという事実を含め、特に女性のニーズと現実に対応することによって、包括的でジェンダーに配慮したものでなければなりません。各国政府は、人身取引防止法を強化する一方で、平等と非差別の原則を掲げる正規移住の選択肢を拡大するために、既存の政策と法律を見直して改正しなければなりません。
搾取、ジェンダーに基づく暴力、差別を減らすために、あらゆる分野、とりわけケアや家事労働といったインフォーマル部門における移民女性の保護を強化することが重要です。移住に伴うリスクや課題を含め、移住について十分な情報を得た上で選択できるよう、女性が正確でジェンダーに配慮した情報にアクセスできなければなりません。言語研修、技能習得、カウンセリングの提供など、移民向けのサービスを確立または拡大することで、移住先で、あるいは帰国後の移民女性の社会統合を強化することができます。また、シェルター、保健サービス、トラウマに配慮したカウンセリングへの無料かつ安全なアクセスが、暴力の被害を受けた移民女性の社会復帰を支援する上で極めて重要です。
(翻訳者:結城直美)
(原文)
Women on the move: FAQs on migration and gender | UN Women – Headquarters
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会