北京宣言および行動綱領 採択30周年:ジェンダーに基づく暴力との闘いをどのように変えたか
2025年1月14日
2024年11月25日付
今から30年前の1995年、第4回世界女性会議に189か国の代表と30,000人を超える活動家が集い、女性と少女の平等な権利を達成するための先見的なロードマップ作成を目指しました。このロードマップは北京宣言及び行動綱領として知られ、最も広く支持されている、女性の権利に関する世界的なアジェンダとなりました。
北京宣言は女性と少女の経験と要求に基づき、女性に対する暴力など12の重大問題領域を取り上げています。
北京宣言及び行動綱領は2025年に採択30周年を迎えますが、今もなお女性の権利とジェンダー平等を求める運動の礎であり、各国政府、活動家、国連がアジェンダ実施について、その進捗を評価し、課題に取り組み、リソースを投入しています。
ジェンダーに基づく暴力と闘う16日間の活動に際して、北京宣言及び行動綱領が女性と少女に対する暴力撤廃を目指すアジェンダをどのように変えたのか、そして今日それがどのような意味を持つのか見てみましょう。
女性の権利は人権である:ジェンダー平等にとって画期的な出来事
1993年、ウィーンで開催された国連世界人権会議で、女性の権利が人権として初めて明確に認められました。
北京で開かれた第4回世界女性会議で、フェミニストは「人権は女性の権利であり、女性の権利は人権である」をスローガンに掲げました。これは、当時アメリカ合衆国大統領夫人であったヒラリー・ロッドハム・クリントン氏がスピーチで述べた言葉です。
北京行動綱領は、女性が暴力を受けることなく生きる権利を明記しました。
本会議において、フェミニストはもう一つの重要な国際協定である女子差別撤廃条約(CEDAW)とその選択議定書に向けて組織を結成し、批准するよう求めました。女子差別撤廃条約は1979年に国連総会で採択、選択議定書は1999年に最終決定され、個人がCEDAW委員会に違反を直接申し立てることを可能にしました。これが政治的な圧力となり、各国政府は女性と少女に対する暴力への対処を迫られました。
今日では、「女性の権利は人権である」ということに議論の余地はありませんが、 女性の3人に1人が生涯において暴力を経験し、 10分に1人の女性が親密なパートナーや家族によって故意に殺害されている現状において、女性が暴力を受けずに人生を送るという約束を果たしている国はありません。
ドメスティックバイオレンス防止法(DV防止法):北京宣言後の急増
1994年当時、ドメスティックバイオレンスに対して法的制裁を科していたのはおよそ12 か国でした。
北京宣言及び行動綱領が採択されると、法的制裁を科す国が急速に増加しました。UN Womenの「女性に対する暴力に関するグローバルデータベース」によると、現在193か国で1,583の立法措置が取られており、そのうち354はドメスティックバイオレンスに特化したものです。
調査では、国際的または地域的な人権協定の採択とフェミニストの社会運動が、進歩的な法律や政策の導入に向けた活動を促したことが示されています。
今では、ドメスティックバイオレンス防止法(DV法)がパートナー間の暴力を減少させることを示す証拠が十分にあります。ドメスティックバイオレンスの発生率は、DV法が制定されていない国の16.1%に対して、DV法が制定されている国では9.5%と報告されています。しかしながら、総合的な法的保護と暴力の被害者支援サービスには差があり、法の施行は依然として困難です。
社会規範を変えて、被害者にとって不可欠なサービスを拡大
北京宣言は、女性と少女に対する暴力への対策を総体的に講じる点で画期的なものであり、シェルター、法律扶助、医療、カウンセリングなどの必要不可欠なサービスへのアクセスを拡大するよう呼びかけました。 1995年以前に存在していたドメスティックバイオレンスに対する制度上の仕組みは、わずか19件でした。こうした制度上の仕組みの95%以上は、北京行動綱領が採択された後に設立されたものです。
北京宣言及び行動綱領は防止にも重点をおき、各国政府や国際開発関係者に、女性に対する暴力の存続を容認する社会規範や固定観念に疑問を呈する教育や啓蒙運動に投資を行うよう求めました。
女性に対する暴力に関するデータが重要な理由
数字に表れないものは、認識されることがありません。女性と少女に対する暴力に関する質の高いデータがなければ、女性が日々直面している現実に政策や法律が十分対応することはできません。
1995年以前は、女性に対する暴力に関するデータのほとんどを小規模な単発の調査から得ていました。女性に対する暴力撤廃に関する国連宣言(1993年)では、各国政府に対して、女性に対する暴力、特にドメスティックバイオレンスに関するデータの収集を求めました。北京宣言及び行動綱領においても体系的なデータ収集を提唱しており、国内における調査や、WHO(世界保健機関)のドメスティックバイオレンスに関する多国間調査など、国際的な調査へとつながっています。
1995年から2014年にかけては、102か国が女性に対する暴力についての調査を国内で実施しました。
現在では、UN Womenの「Women Count」プログラムや女性に対する暴力に関するグローバルデータベースなど世界規模での取り組みがなされ、進捗状況を追跡し、緊急の対策が求められる分野を浮き彫りにしています。2016年に始まった「Women Count」プログラムでは、各国が女性に対する暴力に関してさらに多くのデータを収集できるよう支援を行っており、テクノロジーによって助長される暴力を測定するための枠組みの構築も主導してきました。
フェミニスト運動と女性団体の力
北京行動綱領では、政策立案や被害者支援におけるフェミニスト運動と市民社会の力を認めています。調査によって、力強く自律的なフェミニスト運動の存在が、女性と少女に対する暴力撤廃に向けた変化を促す最も重要な要素であると確認されています。
それでも、2022 年に各国がジェンダーに基づく暴力に取り組むために支出した額は、開発援助の1%にも満たず、女性団体に届いたのはそのうちのほんの一部でした。
UN Womenが国連システムを代表して管理する「女性に対する暴力撤廃国連信託基金」は、女性と少女に対するあらゆる形態の暴力撤廃への重点的な取り組みに特化した、唯一のグローバルな助成金制度です。1996年、北京宣言及び行動綱領に定められた措置に従って、国連総会決議50/166により同国連信託基金の創設が求められました。これまでに、国連信託基金は140の国と地域で670のイニシアチブに対して2億2500万米ドルの支援を実施してきました。
さらに、「ジェンダー平等を目指す全ての世代」フォーラムの「ジェンダーに基づく暴力」行動連合は、少女が主導する団体や女性の権利団体への国からの出資が2026年までに5億米ドル増額されることを目指して活動しています。その結果、女性に対する暴力撤廃に向けたUN Womenの新たなプログラムにEUが2,200万ユーロを拠出するなど、女性の権利運動と啓発活動の強化に向けて、これまでの流れを変えるような取り組みにつながっています。
少女の権利を守る:これまで、そして現在
北京宣言及び行動綱領は、女性に関する初めての世界的な政策文書であり、特に少女の権利に焦点を当て、少女に対する暴力に言及しています。
また、各国政府に対して、児童の権利に関する条約を批准し、少女の出生登録とナショナル・アイデンティティを確保し、少女の科学・技術・工学・数学(STEM)教育や技能訓練への参加を促進するよう求めました。さらに、児童婚、女性器切除といった慣習や10代での妊娠など、今日でも少女の権利、健康、幸福を制限する問題である、ジェンダーに基づく暴力から少女を守るための行動を定めました。
進展は見られるものの、国連事務総長の最新の報告書で示されたように、気候変動やオンラインハラスメントなど、新たな課題が少女に対する暴力を深刻化させています。
2030年までに900万人の少女が児童婚の危機にさらされ、思春期の少女の4人に1人が19歳になるまでにパートナーからの虐待を受ける中、北京行動綱領は少女の権利を守り、少女たちの声が確実に届くようにするための重要な青写真であり続けています。
(翻訳者:本多千代美)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会