すべての女性と少女のジェンダー平等を加速するための行動 

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2025年4月17日

2025年3月6日付

2019年にエクアドルで行われたジェンダーに基づく暴力に反対する「Vivas nos Queremos(私たちは生きていたい)」と題した行進に参加する活動家、社会指導者、団体、そして男女の一般市民。写真: UN Women/ジョヒス・アラルコン

1995年、ジェンダー平等の実現に向けた大規模な変化の土台になる画期的な計画、北京行動綱領のもとに世界は団結しました。ドメスティックバイオレンスから女性を守る法律から、女性と少女をエンパワーするプログラムまで、北京行動綱領は世界を形づくり、すべての女性と少女にとって公平で平等な未来への道を開き続けています。

30年にわたる行動によって、世界中で女性の権利が再形成されており、進歩は可能であるということを示しています。1995年以降、議員に占める女性の割合は2倍以上になり、児童婚率は低下し、現在ではより多くの女性が出産休暇、児童扶養手当、失業手当、年金制度といった、貧困を減らし、女性の経済安全保障を後押しするのに不可欠な手段を利用できるようになりました。

1995年以降、女性と少女にとって最も大きな進歩がみられるのは教育であり、これまでになく多くの少女が就学しています。法的保護も拡大しており、北京行動綱領以前は暴力から女性を守る法律があるのは19カ国にすぎませんでしたが、現在その数は152カ国に増えています。しかし脆弱な政治体制、慢性的な資金不足、度重なる衝撃的な出来事や危機によってなかなか前進することができず、挫折することもしばしばです。

最新の国連事務総長報告では、この状況が続けば、今日生まれた女の子は、女性が議会で男性と同数を占めるまでに39歳に、児童婚の終結を見るまでに68歳になるだろうとされています。しかも、これは氷山の一角にすぎません。2002年に女性64%、男性94%であった労働力参加率は、2022年は女性63%、男性92%と、この20年間ほとんど変わらずに停滞しています[1].  

希望への理由: 女性の権利に関する主要な前進

国連事務総長報告は、過去5年間にわたる159カ国の進歩の状況を追跡し、進歩した点とまだ努力が必要な点を示しています。 

数字で見る進歩の兆候

  1. 女性に対する暴力: 90%の国がジェンダーに基づく暴力に関する法律とその実施、執行を強化していると報告しており、2019年の83%から増加しています。
  2. 貧困: 79%の国が、貧困を食い止め、女性の経済的エンパワーメントを後押しするために重要な出産休暇、現金給付、年金制度などの社会保障制度を強化する取り組みを報告しており、2019年の70%から増加しています。
  3. 少女の権利: 70%の加盟国が少女が教育を受けることができるようにする活動に注力しており、2019年の61%から増加しています。  
  4. リーダーの立場にある女性: 38%の国が公共の場での女性に対する暴力を防ぎ、調査する政策を報告しており、2019年の報告から倍以上に増えています。
  5. 土地と資源へのアクセス: 48%の国が、女性が土地、水、エネルギー、他の天然資源をさらに利用できるように行動していると報告しており、その割合は2019年から10ポイント上昇しています。
  6. 危機的状況にいる女性: 43%の国が人道支援や危機対応にジェンダーに配慮した方法を採用していると報告しており、2019年の40%から増加しています。   
  7. 無償のケア労働: 高齢者向け介護サービスについて報告する国は、2019年の46%から2024年の66%に増加しました。これは、無償のケア労働や地域活動に多く割かれている女性の時間を解放するための鍵です。

ジェンダー平等を妨げるものとは?

進歩が見られる一方で、ジェンダー平等への進歩を妨げる大きな課題が依然として存在しています。国連事務総長報告によると、これらは北京行動綱領で示された約束を果たすために至急の対応が必要な問題です。 

  1. 経済的衝撃、気候変動による衝撃、新型コロナウイルス感染症の流行、紛争:これらの危機は過去5年にわたってジェンダー平等を後退させています。感染症拡大に伴う外出制限の期間にドメスティックバイオレンスは急増し、紛争や気候非常事態は、世界中の何百万人もの女性と少女に不均衡な影響を及ぼしています。2023年には170件以上の武力紛争が起こり、紛争地域から50 km圏内には約6億1,200万人の女性と少女がいました。これは2010年の2倍以上の数です。また、気候危機の深刻化によって、2050年までにさらに1億5,830万人の女性と少女が貧困に追いやられる可能性があります。  
  2. フェミニズムへの反発とジェンダー疲れ: 近年、女性の性と生殖に関する健康の権利を標的にした差別的な法律によって反権利の運動が勢いづいており、女性のサービス利用が制限され、ジェンダーに基づく暴力に対する法的保護が弱体化しています。政治家や公共の場に立つ女性が脅威に直面する場面が増え、女性と少女が意見を表明し、リーダーの責任を追及する場は驚くべき速さで縮小しています。 
  3. ジェンダー平等のための資金の不足: 法律があるだけでは暮らしは変えられません。進歩を現実にするには、法律や政策を実行に移すための実質的な投資が必要です。しかし、ジェンダー平等のための資金は滞っています。特に世界の最貧国においては緊縮政策や急増する債務によって、医療や教育といったエッセンシャルサービス(欠かすことのできないサービス)が削減されています。2022年、二国間援助のうちジェンダー平等が主目的であるプログラムに提供されたのは総額のわずか4%でした。女性の権利団体や政府機関への支援も後退しています。2021年から2022年における女性の権利団体への資金提供は年平均5億9,600万ドルで、2019年から2020年の8億6,700万ドルから3分の1減少しました。国内のジェンダー平等団体は資金を打ち切られ、弱体化したり解体されたりして活動を実施する力、能力、資源がない状態になり、危機的状況に追い込まれています。
  4. 人口の変化: サハラ砂漠以南のアフリカ全域と、アジア、ラテンアメリカ、カリブ地方の一部では、人口の急増によって医療、教育、性と生殖に関するサービスなどの公共サービスがひっ迫していますが、これらの地域では政府が以前からこうしたサービスの提供に苦心していました。ヨーロッパや日本など他の地域では、人口の高齢化によって無償のケア労働が増していますが、それは、男性よりも女性や少女が多く担っています。

ジェンダー平等の達成のためにすべきこととは?

私たちには女性と少女の未来を変える力がありますが、すぐに行動する必要があります。若い女性と思春期の少女のリーダーシップをそれぞれの取り組みの中心に据えて、すべての女性と少女のために真の変化を起こすことができる6つの取り組みを紹介します。 

1. すべての女性と少女のために— デジタル革命

ジェンダー間の情報格差をなくせば、今後5年で5,000億ドルを節約できます。 テクノロジーは排除ではなく、平等のための力でなければなりません。

グローバルデジタルコンパクトを支持して、ジェンダー間の情報格差を埋める政策を策定し、テクノロジーにおけるすべての女性と少女の平等なアクセスとリーダーシップを確保しましょう。

2. すべての女性と少女のために — 貧困からの解放

女性のほぼ10人に1人が極度の貧困の中で暮らしています。公共サービスと社会保障は、女性の経済安全保障を拡大します。また、女性は少なくとも男性の2倍の無償のケア労働を担っています。ケアは家族、社会、経済の幸福に不可欠であるのに、十分な評価や報酬を受けていません。保育、有給休暇、長期的ケアなどのサービスに投資することは、2035年までに3億人の雇用を生み出すきっかけになります。 

女性と少女が成長の機会を平等に得られるように、社会保障制度、公共サービス、ケアサービスに投資しましょう。 

3. すべての女性と少女のために— 暴力をゼロに

女性の3人に1人が生涯のうちに身体的または性的な暴力を経験します。世界中で多数の法律が制定されていますが、その実施が不十分であることが多く、防止策への投資は不足しています。

女性に対する暴力への不処罰を認めない国内法や政策を採択し、実施し、資金援助し、地方の女性団体を支援しましょう。

4. すべての女性と少女のために— 完全かつ平等な意思決定権

世界全体で国会議員に占める女性の割合は27%ですが、女性の暮らしを左右する決定を行うのは圧倒的に男性です。これは不公平であるだけでなく、非効率です。女性が政治に参画すれば、より包摂的な決定、多様性のある解決法、より強い経済的成果を実現することができます。

法律と政策を実施し、政治、ビジネス、組織で意思決定権のある女性の数を増やすために、クオータ制など一時的な特別措置を適用しましょう。 

5. すべての女性と少女のために— 平和と安全保障

6億人以上の女性と少女が武力紛争の影響下にある地域で暮らし、紛争に関連した性的暴力は昨年だけで50%も増えています。女性団体が平和構築と危機対応の最前線にいますが、十分な資金がなく、評価も低いままです。 

平和と安全のあらゆる面への女性の意義ある参画を拡大し、危機や紛争の状況にある女性団体に資金を提供するために、十分な資金を投入した国家計画を採択しましょう。

6. すべての女性と少女のために— 気候正義

気候危機と生物多様性の喪失が加速しており、女性、特に農村や先住民の地域に住む女性たちはこうした影響の矢面に立っています。しかし、同時に解決策の最前線にいるとも言えます。

女性と少女のリーダーシップへの投資や持続可能な農業、再生可能エネルギー、ケアといったグリーンジョブへのアクセスを拡大することで、気候変動対策において女性と少女を優先しましょう。 

共に手を携えて、すべての女性と少女にとって公平で平等な未来を創りましょう。

北京行動綱領は、変化への基盤を築きました。今こそ切迫感、協調性、責任を持って行動を起こすときです。約束を行動に移し、この世代のためにジェンダー平等を現実のものにしましょう。

注:
[1]  ILOSTATの「人口と労働力に関する統計」と国連のデータポータル(2024年10月閲覧)に基づいてUN Womenが算出。

(翻訳者:早乙女由紀)

(原文)
https://www.unwomen.org/en/articles/explainer/actions-to-accelerate-gender-equality-for-all-women-and-girls

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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