ソーラーランプ、代替燃料、生理用品などの救援物資はロヒンギャ女性難民の生活必需品
2018年2月28日
バングラデシュ女性・子ども省とアクション・エイド・バングラデシュの協力の下、UN Womenからディグニティ・キットを受け取るコックスバザールのロヒンギャ難民女性。
写真:アクション・エイド・バングラデシュ/モハッマド・サリフル・イスラム
23歳のマハムーダ・ベーガムは、バングラデシュのコックスバザールにあるバルカリ難民キャンプのモイナゴナというところでにわかづくりの家に住んでいます。ミャンマーの国境を越える直前に何ら医療支援のないまま自力で出産し、生まれたばかりの赤ん坊を連れて、最近ここにたどり着きました。コックスバザールへ着いて間もないおよそ688,000人[1]に上るロヒンギャ難民の一人で、過酷な道のりを経てきました。
「妊娠8ヵ月だったので、故郷からの逃避行の間、容赦ない苦痛に耐えなければなりませんでした」とマハムーダは言います。「私たち家族は、野ざらし雨ざらしの中を5、6日かけて山を越え、森を抜けなければなりませんでした。他の何千人もの女性も同じような苦難に耐えていました。私たちは安全な場所を求めて前に進むほかありませんでした。私はお腹の子のために国境を越えました」。
2017年9月、マハムーダは男の子を出産し、自分と赤ん坊用の衣服や薬、衛生用品、衛生器具が急ぎ必要となりましたが、救援物資には普通そのようなものは入っていません。
バングラデシュは30年近くミャンマーからのロヒンギャ難民を受け入れています。しかし近年、ミャンマーのラカイン州における暴力激化のため、2017年8月以降、約688,000人ものロヒンギャ人が国を追われました。
写真:アクション・エイド・バングラデシュ/モハッマド・サリフル・イスラム
ロヒンギャ難民が大挙して流れ込んできたときから、石鹸、衣服、ムスリムのスカーフ、生理用品、懐中電灯などの生活必需品がひとまとめになった「ディグニティ・キット」と呼ばれる救援物資を難民女性に配布する努力が、多くの人道支援団体によって続けられています。しかし、流入する難民の数が膨大でキットを手にできない人が多くいました。
そこでUN Womenは、バングラデシュ女性・子ども省(MoWCA)とコックスバザールのアクション・エイド・バングラデシュと協力して、12月から1月にかけて特に世帯主の女性、妊婦、授乳中の女性、思春期の少女、特別なニーズがある女性と少女を中心に、ディグニティ・キットを7,893世帯に配布しました。
「キットをもらい、使い方も教わったので、自分と赤ちゃんのケアができるようになり楽になりました」とマハムーダは言います。
バングラデシュは30年近くミャンマーからのロヒンギャ難民を受け入れています。しかし近年、ミャンマーのラカイン州における暴力激化のため、2017年8月以降、約688,000人ものロヒンギャ人が国を追われました。その過半数は女性と少女です。難民はほとんど何も持たず、困窮し精神的なショックを抱えて難民キャンプに来ます。
難民キャンプでは、その他にも女性は男性より多くの問題に直面しており、その例として照明器具の不足があります。
12月と1月にUN
Womenは、バングラデシュ女性・子ども省(MoWCA)とコックスバザールのアクション・エイド・バングラデシュと協力して、特に世帯主の女性、妊婦、授乳中の女性、思春期の少女、特別なニーズがある女性と女児を中心に、ディグニティ・キットを7,893世帯に配布しました。
写真:アクション・エイド・バングラデシュ/モハッマド・サリフル・イスラム
ミャンマーのラカイン州にあるバリンカティで過激化するロヒンギャへの暴力から逃れる途中、ナフ川を渡っているときに両親とはぐれてしまった16歳のルビナは、キットに入っているソーラーランプが非常に便利なことに気がつきました。
「暗くなると、私たち女性は大人も子どももテントから出るのが怖くて、トイレや水を汲みに管井戸に行くことさえできないことがよくあります。救援物資をもらいに配布場所をいくつも回らなければならず、明るいうちに家事を済ませられないことがときどきあります。そうなると、家事をするのは暗くなってからになります。このランプで私たちは助かっています。今は暗くなってからでも料理や皿洗い、水汲みもできます」とのことです。
UN Womenが6,000を超えるロヒンギャ難民世帯に代替燃料として配った、もみ殻練炭もソーラーランプ同様、女性に非常に役立つものです。もみ殻練炭は煙が少ないことから、テントの中で薪の煙を長期間浴び、呼吸器や目の不調を訴えることが多くなっていた女性や少女の生活環境が改善されています。また、難民女性は自身や子どもをコックスバザールの12月の並外れた寒さから守るためのブランケットも受け取っています。
UN Womenとパートナー組織は、石鹸、衣類、ムスリムのスカーフ、生理用品、懐中電灯などの生活必需品がひとまとめになった「ディグニティ・キット」という救援物資を女性に配っています。
写真:アクション・エイド・バングラデシュ/モハッマド・サリフル・イスラム
人道支援を計画するときには、女性の声に耳をかたむけ、女性の役割の観点から彼女たちが必要としているものを理解することの大切さが、今回のバングラデシュでの経験から明らかになりました。照明器具や安全な料理用燃料のような簡単なものでも、女性や少女が危ない目や危険なものにさらされないようにするという点で大きな違いを生み出すことができます。ルビナやマハムーダにとっては、それは移動や健康、安全を左右する問題です。
UN Womenバングラデシュ事務所長の石川祥子氏は「危機に瀕すると、女性と男性で必要なものや、脆弱性が違うということをUN Womenは認識しています。女性や少女が救援活動中に軽視され、放っておかれることがないよう、人道支援コミュニティーにこうした性差を理解してもらうことが私たちの役割です」と述べました。
UN Womenの人道支援について詳しく知りたい方はこちら。
脚注
[1] 数字は2018年1月21日時点のもの。ISCG(国連の部門間調整グループ)の報告書より。
(翻訳:高尾紀章)
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会