世界の人道支援活動を改善するためのジェンダーハンドブック

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2018年4月26日

4月17日、人道支援の関連機関フォーラムである関連機関常設委員会(IASC)、欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)、及びUN Womenは、協同で「人道支援のためのジェンダー・ハンドブック」を作成・発表しました。これは人道支援の現場で働く人たちに、その支援サイクル全体にどのようにジェンダー平等と女性・少女のエンパワーメントを組み込んでいくかを手引きする実用的ツールです。

ジェンダーハンドブック発表1
ジェンダーハンドブック発表

人道支援ジェンダーバンドブックの発表がジュネーブで4月17日に行われました
Photo: UN Women/Maiken Thonke

世界では、1億2千8百万人もの人々が人道支援を必要とし、6千5百万人が難民や避難民となり、その期間が17-25年に及んでいます。このような危機は、今やニューノーマル(世界経済はリーマンショックから回復しても以前の姿には戻れない、との見方から生まれた言葉で新たな常態・常識の意味)となりました。危機状況では女性と男性、少女と少年は異なった影響を受けます。女性・少女は男性・少年に比べ格段に生計、教育、健康へのアクセスが減り、性的あるいはジェンダーに根差す暴力の脅威が増します。しかしながら、実際に危機状況に陥った時、人道的対応にこのようなジェンダーによる差異がいつも考慮されているとは言えません。具体的な指針、ツール、ノウハウがないと人道支援はジェンダー視点が全くないことから生じるリスクを冒すことになります。

変化してゆく人道支援活動の状況を踏まえ、UN Womenとそのパートナー政府や機関は、人道支援を実行していく中心にジェンダー平等を据えようとしています。ジェンダー平等および女性のリーダーシップと意思決定への全面的参画は、人道支援の基礎であり、様々な年齢、能力を持った被害者のニーズに応えていく上で欠かすことができません。

「人道支援のためのジェンダー・ハンドブック」は、3年におよび、関係機関が共同で実施してきた協議(コンサルテーション)が結実したもので、e-ラーニングや研修資料で補足されるようになっています。ハンドブックは、現在アラビア語、フランス語、スペイン語に翻訳中です。ハンドブックは使いやすいように工夫されており、人道支援に様々なレベルでかかわっている人たちが、それぞれの役割や責任を明確にし、説明責任を果す上でも大変重要です。ハンドブックは、また人道支援者が、仙台防災枠組、「大きな取引“Grand Bargain”」(事務総長の人道資金の調達に関するハイレベルパネル報告の中で使われた)、世界人道サミット、「新しい人道支援の在り方」(国連人道問題調整事務所OCHA)、IASCジェンダーと年齢マーカー、などに取り組んでいくと約束したことを実行し、現場で目に見える具体的な変化をもたらすための助けになるものです。

ジェンダーハンドブック発表1
ジェンダーハンドブック発表

人道支援ジェンダーハンドブックは人道支援の現場で働く人たちに、その支援サイクル全体にどのようにジェンダー平等と女性・少女のエンパワーメントを組み込んでいくかを手引きするツールです
Photo: UN Women/Maiken Thonke

ハンドブックの発表会では、ナズムン・ナハール氏(バングラデシュ・オックスファムのジェンダー正義プログラムマネジャー)が、オックスファムが実際にハンドブックを使ってコックスバザールで行っている事業を紹介しました。その内容は、ロヒンギャ危機が広がっていく中で、人道支援サイクルの中でジェンダーと人々の保護の主流化を促進することや、政府やコミュニティの協力を得るために研修や定期的な会合を持つこと、などです。

指針を実用的でかつ使いやすくするため、このハンドブックには、様々な国の250人以上の人道支援担当者からのフィードバックが入っています。つまり政府、ドナー、国連機関、国内外のNGO, 市民社会からのフィードバックが含まれているのです。加えて、IASCの部門別リーダーシップシステムのメンバーや多くのジェンダー専門家の技術的インプットも入っています。

既に、7,000部のハンドブックが、英語、フランス語、アラビア語、スペイン語で、OCHAの世界中の地域事務所に配られました。英語のオンラインバーションは、こちらをご覧ください。

4カ国語のオンライン版(印刷用ファイルへのアクセス可)や関連研修資料、e-ラーニングコースは、数か月後には完成します。このハンドブックは、欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)からの資金援助で作成されました。

UN Women Weekly News Update, 23-30th Aprilより
(翻訳:本田敏江)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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